半導体のガラス基板時代、中国メーカーも量産視野へ

先端パッケージの進化に伴い、半導体は高速伝送・低消費電力・高効率放熱といった特性をますます強く求めている。こうした要求に応える新材料として注目されているのがガラス基板だ。中国メーカーはTGV(微細孔付きガラス基板)加工やパネルレベルパッケージングで独自の強みを磨いており、自主技術によるガラス基板量産も視野に入ってきた。

ガラスは表面平滑性が高く、熱膨張係数が低いためリソグラフィー工程が簡略化できる。さらに多チップ実装で課題となる反りを大幅に低減し、混合ボンディングによる高密度再配線層(RDL)を実現。伝送損失も極めて低く、高周波デバイスに適している。

シリコンインターポーザや有機基板が直面するボトルネックも克服可能だ。ガラスはシリコンよりコストが安く、反り率50%減、位置精度35%向上、2μm以下のRDL形成が可能。さらに光透過性を生かして光導波路を埋め込めるため、6G(第6世代移動通信システム)にも対応できる。

誘電率はシリコンの約1/4(2.8 vs 12)、損失正接も低いため、信号完全性が大幅に向上。これらの特性により、ガラスは「ポスト有機基板」の本命として業界から注目を集めている。

脆弱性が課題

一方で、ガラスの脆弱性は大きな課題だ。切断工程での微細亀裂や、大量のガラススルーホール(TGV)の形成が難しい。だがAI(人工知能)・HPC(高性能コンピューティング)需要の高まりが技術革新を加速。「100GHz対応の積層ガラス」、「レーザー改質+高周波エッチングによるTGV形成」、「6µm・アスペクト比15超のTGV実証」、「予測的良率モデルを活用したFOPLP(扇出型パネルレベルパッケージ)の歩留まり改善」などの成果が国際会議で発表され、実用化への道筋が示されている。

世界大手が試作を本格化

米半導体大手のIntel(インテル)は2023年に世界初のガラス基板チップ試作を公開し、超大規模パッケージへの応用を打ち出した。直近では「外部調達を検討」との報道もあるが、同社は30年までの商用化計画に変更はないと強調している。

韓国サムスン電子は24年に試作ラインを設置、26年以降の量産を計画している。台湾積体電路製造(TSMC、台積電)も25年に米半導体大手のNVIDIA(エヌビディア)向けガラス基板チップの試作を予定し、ガラスコアFan-Out技術やTGVプロセスを重点開発分野に据えている。

韓国メディアEtnewsの9月末の報道によると、米Tesla(テスラ)とApple(アップル)は半導体チップとデータセンターの性能向上を目的に、ガラス基板の導入を検討しているという。

中国本土メーカーの台頭

中国でもTGV技術を軸に複数企業が台頭している。三叠纪科技は、世界最先端のサブ10µm TGV技術を確立。広東省東莞市の松山湖に試作ラインを建設する。中国液晶パネル大手の京東方科技集団(BOE、北京市)もディスプレイ技術を応用し、8インチ試作ラインを稼働した。AIチップ向けに高密度3D相互接続技術を開発する計画だ。

そのほか、厦門雲天が4µm TGVを突破、2.5Dガラス中介層を開発。AI/CPU/GPU大規模チップに対応。仏智芯も1µm孔径・アスペクト比150:1を達成し、大板FOPLP量産ラインを保有。沃格光電の子会社通格微電が全工程のTGV製造能力を備える。奕成科技がFOPLP量産を国内で初めて実現、唯一の高密FOMCMプラットフォーム量産企業になっている。

  • 三叠纪科技:世界最先端のサブ10µm TGV技術を確立。松山湖に中試ラインを建設。
  • 京东方(BOE):ディスプレイ技術を応用し、8インチ試作ラインを稼働。AIチップ向けに高密度3D相互接続技術を開発。
  • 厦门云天:4µm TGVを突破、2.5Dガラス中介層を開発。AI/CPU/GPU大規模チップに対応。
  • 佛智芯:1µm孔径・アスペクト比150:1を達成、大板FOPLP量産ラインを保有。
  • 沃格光電:子会社通格微電が全工程のTGV製造能力を備える。
  • 奕成科技:FOPLP量産を国内で初めて実現、唯一の高密FOMCMプラットフォーム量産企業に。

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