中国、AIチップ生産を3倍に拡大へ= NVIDIA依存脱却に本腰

米中両国の先端AI(人工知能)分野での競争はますます激化している。英フィナンシャル・タイムズが27日に報じたところによれば、中国の半導体メーカーは2026年、国内AIプロセッサーの総生産量を現状の3倍に増やし、米半導体大手のNVIDIA(エヌビディア)への依存度を引き下げる計画だという。

関係者によれば、国内大手向けにAIプロセッサーを供給する新たなファウンドリー(半導体受託製造)が建設を急ぎ、早ければ年内に稼働を開始する見込み。さらに2つの工場が26年の稼働を予定している。

一方で、中国のAI(人工知能)開発企業、杭州深度求索人工知能基礎技術研究(DeepSeek、ディープシーク、浙江省杭州市)が提唱する新しい標準規格に対応可能な次世代AIチップの開発も進めている。同社は先週、最新モデル「DeepSeek-V3.1」を発表し、これは“エージェント時代”への第一歩だと強調。今回導入された精度規格「UE8M0 FP8」は、まさに次世代国産チップに最適化されているという。

FP8は8ビット浮動小数点フォーマットで、従来のFP32やFP16に比べてデータを効率的に扱える“小袋”のような規格だ。業界が求める低消費電力かつ高効率の計算に直結し、低精度演算ブームを巻き起こしている。こうした取り組みによって、中国AI企業は国際競合との競争力を強化できると期待される。

ある中国のチップメーカー幹部は「国内のAIチップ供給不足は長くは続かない。来年には新規の生産能力が一斉に稼働する」と述べている。その上で「国産チップと国産AIモデルの深い適合が実現できれば、それはまさに“DeepSeekの転機”と呼べるだろう」と語っている。こうしたエコシステムの構築には、計算チップ、メモリー、接続ハードウェア、さらにはソフトウェアツールの開発企業が長期的に連携する必要がある。

メモリー分野でも中国勢の動きは加速している。韓国サムスン、SKハイニックス、米Micron Technology(マイクロン・テクノロジー)の3社が市場を支配しているが、中国の大手メモリメーカーは最先端からわずか1世代遅れの新製品をテスト中だという。こうした背景のもと、中国政府もAI産業の推進に本腰を入れており、中国国務院(中央政府)は「人工知能+」行動計画を本格実施し、経済・社会全般でAIの活用を進める方針を明確にした。

DeepSeek創業者の梁文鋒氏は「NVIDIAの地位は単独企業の努力ではなく、西側全体の産業協調の成果だ。中国も同様のエコシステムを必要としており、その最前線に立つ人材が求められる」と述べている。現在はNVIDIA製GPU(画像処理半導体)に依存したトレーニング環境が主流だが、国産チップの性能向上と供給拡大によって、来年には大きな転機を迎える可能性がある。

一方、米国による規制圧力は依然強い。2022年10月以降、先端半導体の対中輸出規制は段階的に強化され、NVIDIA、Advanced Micro Devices(AMD、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)、Intel(インテル)などは中国市場での販売を制約されてきた。NVIDIAは輸出規制に準拠したGPU「H20」を中国向けに設計したが、今年4月にはトランプ政権が販売禁止措置を一時発動し、受注を取り消す事態に追い込まれた。その後、米政府は同社に対し、中国販売収益の15%を“上納”することを条件に輸出許可を与えたと報じられている。

ただし、中国政府は「H20」の使用に慎重姿勢を強めており、特に政府や安全保障関連の用途では避けるよう企業に求めていると伝えられる。それでもNVIDIAは中国市場をあきらめておらず、最新アーキテクチャ「Blackwell」をベースとする新型チップ「B30A」を開発中だという。

中国外交部の林剣報道官は、米国の規制について「技術や経済貿易を政治化・武器化することに反対する。我々の立場は一貫して明確だ」と述べ、世界的な供給網を乱す米国の対応を批判している。

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