サムスン、15%の米韓関税協定で「不確実性軽減」

韓国サムスン電子は7月31日、米国が韓国からの輸入品に15%の相互関税を課す貿易協定の締結を受け、「今後の不確実性が緩和された」と表明した。同社は、米Tesla(テスラ)と締結した165億米ドル(約2兆4660億円)規模の半導体受託生産の契約を受け、大型の半導体受注がさらに増加する見通しだとしている。

サムスン電子のノ・ミジョン副社長は、決算説明会で「この画期的な契約を契機に、大口顧客からさらなる注文が入ると期待している」と語った。業績不振が続いていた同社のファウンドリー(半導体受託生産)事業に関する発言だ。

テキサス州に建設中の新しい半導体工場では、テスラ向けのチップ生産が予定されており、2026年からの稼働を目指している。このプロジェクトは、記憶用半導体を主力としてきたサムスンが、台湾積体電路製造(TSMC、台積電)が主導する高性能ファウンドリー事業へと事業の軸を拡大しようとする李在鎔(イ・ジェヨン)会長の戦略の中核とされている。

こうした発言の直前、サムスンは2025年第2四半期(4~6月)の営業利益が4兆7000億ウォン(約4700億円)となったと発表。これは過去6四半期で最低の水準で、事前の市場予想とほぼ一致するものの、投資家にとっては失望感が広がっていた。サムスンは、今年後半には全体的な業績が回復に向かうと見込んでいるが、具体的な数値や見通しは示していない。

特に半導体部門では、25年第2四半期の営業利益が前年同期比で94%減少。米半導体大手のNVIDIA(エヌビディア)向け最新AI(人工知能)チップの供給遅延や、米国による中国への先端半導体輸出規制の影響が要因とされている。

サムスンは今週、テスラとの大型契約を結んだばかりだが、その数日後、米国のトランプ大統領は米韓間の関税協定を発表。これにより、サムスンを含む米国とアジア諸国の主要企業間の緊張が一時的に緩和されたとみられている。

一方で、サムスンの業績悪化は、AIデータセンター向けの高帯域幅メモリー(HBM)チップ分野において、同社がSKハイニックスなどの小規模競合に後れを取っているのではという懸念を強めている。

サムスンは24年10月、HBM3Eチップの供給契約で重要な進展があったと発表。市場関係者は、その供給先がエヌビディアであるとみている。サムスンは、次世代のHBM4のサンプルをすでに提供しており、26年には本格供給を開始する予定。エヌビディアなどが主要顧客になる見通しだという。

また、クラウドサービス大手による継続的な設備投資を背景に、AI関連チップの需要が後押しとなり、今年後半の半導体市場環境は改善が期待できるとする一方で、貿易政策の不透明感や地政学的リスクにより、世界経済の成長鈍化には注意が必要だとも述べている。

サムスンのパク・スンチョル最高財務責任者(CFO)は、トランプ大統領による貿易協定の発表後、「米韓間の交渉が終結したことで、不確実性はある程度和らいだと考えている」と語った。ただし、スマートフォン、タブレット、PCなどに関連する半導体製品や電子機器の輸入に対する米国の国家安全保障上の調査については、引き続き重大な影響を及ぼす可能性があるとして注視している。

25年四半期のサムスン全体の売上高は74兆6000億ウォンで、前年同期比0.7%の増加。市場予想の74兆ウォンとほぼ一致した。半導体部門の営業利益はわずか4000億ウォンで、前年同期の6兆5000ウォンから大幅減。6四半期ぶりに1兆ウォンを下回る結果となった。同社は声明で、メモリー在庫の評価額調整や、対中輸出規制によるファウンドリー事業への一時的な損失が、半導体部門の利益を圧迫したと説明している。

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