サムスン、低価格帯光マスクの生産を外部委託へ

韓国の半導体大手・サムスン電子は、これまで内製してきたメモリーチップ製造用の光マスク(フォトマスク)のうち、i-lineおよびKrFといった低価格帯製品の外部委託を検討していることが明らかとなった。同社はより高度な製造プロセスであるArFやEUV(極紫外線)リソグラフィーへ経営資源を集中させる構えだ。
韓国TheElecが14日伝えた。これまで技術流出を懸念し、すべての光マスクを自社生産してきたサムスンだが、複数の関係者によると、現在は日本の凸版印刷グループに属するTekscend Photomaskや、米国Photronics傘下のPKLといった外部企業を候補として評価を進めている。選定は今年第3四半期(7〜9月)中に完了する見通しだ。
サムスンのi-line(365nm波長)およびKrF(248nm波長)光マスク製造装置は老朽化が進んでおり、すでにこれらの装置は市場での調達が困難になっている。一方で、サムスンは以前ほど技術的優位性を持たなくなっており、仮に外注しても技術流出のリスクは限定的と見られている。
ただし、コスト面では自社製造のほうが依然として有利であるとの声もあり、今回の方針転換は効率化と先端技術強化の両立を模索する中での判断とみられる。
光マスクは、半導体チップの設計パターンをシリコンウエハー上に焼き付けるための極めて重要な部品で、使用する光の波長により以下のように分類される。i-line(365nm)は最もシンプルな回路用、KrF(248nm)は中程度の解像度、ArF(193nm)は高解像度の回路に対応、EUV(13.5nm)は最先端の回路パターン描画に用いる。
今回サムスンが外注を検討しているのは、比較的低解像度のi-lineおよびKrF領域。これにより、高解像度領域であるArFやEUVへの人材・設備の集中が可能になる。
韓国の光マスク市場は約7000億ウォン(約700億円)規模。国内企業の工場稼働率は90%を超えており、特に中国のファブレス企業からの需要増が市場成長を後押ししている。
ただし、サムスンによる外注化の動きは、他のファウンドリ企業にとっては光マスクの調達難を招く可能性もある。業界関係者の間では、韓国国内の光マスク供給体制の逼迫を懸念する声も出始めている。