米商務省、半導体製造装置など新たな対中輸出規制を発表
北方華創含む中国半導体など136社を禁輸リストに追加
米国商務省産業安全保障局(BIS)は2日夜、中国に対する輸出管理規則(EAR)を改訂版を発表した。半導体製造装置メーカーの北方華創科技集団(NAURA、北京市)など中国の半導体関連企業など136社を禁輸リスト(エンティティ・リスト、EL)に追加したほか、特定の半導体製造装置(SME)を新たに輸出規制対象とした。
BISは、今回の規制は「中国による戦争の未来を変える可能性を持つ先進的なAI(人工知能)の開発を遅らせること」や「中国による独自の半導体エコシステムを構築することを阻止すること」の2つを目的としていると指摘。規制対象となるSMEは、先端兵器システムや軍事用途で使用される先進的なAIに必要な先端プロセスノードIC(集積回路)の製造に必要なものが中心となっているとした。
エンティティ・リストの136社は、半導体製造装置メーカーが制裁の中心となっており、北方華創科技集団、拓荊科技、盛美半導体設備(ACM)、至純科技、中科飛測、新凱来、凱世通、華峰測控、華海清科、芯源微などの半導体製造装置メーカーとその子会社の一部が禁輸リストに含まれた。
半導体メーカーの昇維旭、青島芯恩、鵬新旭、EDAメーカーの華大九天、フォトレジストメーカーの南大光電、大型ウエハーメーカーの上海新昇、電子特殊ガス会社の南大光電、至純科技、国内パワー半導体とODMメーカーの聞泰科技と子会社(安世半導体は含まず)も企業リストに含まれた。 一方、半導体製造装置メーカーの中微半導体設備(上海)股フン(AMEC)は禁輸リストに含まれていなかった。
米国のサプライヤーは、特別ライセンスを取得しない限り、企業リストに掲載されたこれらの中国企業への出荷が禁止される。ラム・リサーチやKLAなどの米半導体装置メーカー、アプライド・マテリアルズの海外子会社、オランダの半導体装置メーカーASMインターナショナル(ASMI)などに対中輸出が大きく制限され、打撃を受ける可能性がある。
半導体製造装置を規制対象に
さらに、特定の半導体製造装置(SME)を新たに輸出規制対象とする暫定最終規則(IFR)を設けた。24種類の半導体製造装置と3種類のソフトウェア・ツールに新たな規制を課したほか、シンガポールやマレーシアなど海外で生産されるチップ製造装置に対する新たな輸出規制も追加した。AIトレーニングなどのハイエンド・アプリケーションに不可欠な広帯域メモリー(HBM)の対中輸出規制も加えた。
○規制された半導体製造装置(SME):エッチング、蒸着、リソグラフィー、イオン注入、アニール、計測、検査、洗浄装置など24種類。
○ソフトウェアツール:半導体の開発または製造に使用される3種類の電子計算機支援ソフトウェア(ECAD)および技術計算機支援設計(TCAD)、高度な機械の生産性を向上させたり、高度でない機械が高度なプロセスチップを生産できるようにする特定のソフトウェアを含む。
○高帯域幅メモリー(HBM):メモリー帯域幅密度が3.3GB/s/mm^2を超えるチップの輸出規制を強化する一方、これ以下のメモリ帯域幅密度のチップはライセンス認証を申請できる。(一部の「HBM2」や、より高度なHBMが制限される可能性があり、「技術移転のリスクが低い」一部のケースでは、欧米企業は依然としてHBM2チップを中国でパッケージングできることも示している)。
○新しい外国直接製品(FDP)ルール:外国で生産された商品の仕向け地が中国または国グループD:5(マカオなど)の仕向け地であることが「既知」である場合、特定の外国で生産されたSMEおよび関連成形品に対する管轄権を拡大する。ELで「軍事目的で先端ノード半導体を製造している」などの指定を受けた事業体が、特定のSMEおよび関連品目の生産などに関与しているという「知識」がある場合、輸出規制対象とする。
中国半導体業界への影響
一方、北方華創科技集団の関係者は3日、科創板日報に対し、「(今回の管理措置は)同社にはほとんど影響がない。ここ数年、主にサプライチェーンの開発に注力してきた。現在の収益の90%は国内市場で、海外市場は10%未満であり、この影響は小さいと予想される」とコメントしている。
中国の半導体薄膜形成設備メーカー、拓荊科技(遼寧省瀋陽市)も「同社の経営への影響は比較的小さいと予想している」として、「同社の販売エリアは国内が中心で、主要部品や材料に加え、同社は複数の供給元を持っているが、サプライチェーンの安定性を守るために一定量の在庫も確保している」と述べている。
中微半導体設備の尹志堯董事長(会長)は以前、同社のエッチング装置の部品の60%は国内で購入し、MOCVD装置の国産部品の割合は80%にも達することを明らかにしている。ただ「60~80%」という数字は、外資系供給メーカーの中国子会社も含まれており、残りの20~40%は輸入に依存しているとみられる。
半導体検査測定設備メーカーの深セン中科飛測科技(広東省深セン市)の陳魯董事長は「検査設備とプロセス設備に必要な部品は同じではないため、この分野の部品の国内サプライチェーンは比較的弱い」と明かしている。
シリコンウェーハの表面を研磨する装置、CMP装置に必要なコア部品の多くは国内では購入できず海外からの輸入に依存している。ハイエンド集積回路(IC)設備の研究開発(R&D)を手掛ける華海青科(天津市)の張国銘総経理(社長)は「競合他社は、必要なコア部品はすべて自社で製造しており、サードパーティのものを購入することはない」と指摘している。
米国による中国半導体業界に対する制裁が始まった過去2年間で、国内半導体メーカーは積極的に内製化を進めており、中国半導体メディアの芯智訊は「全体的に一定の影響はあるものの、深刻なものとはならない」と分析している。
EDA(電子設計の自動化)ソフトウエア開発の北京華大九天科技(北京市)は「EDAソフトウェアの中核は優秀な技術者。国内では米国製EDAへの需要は比較的限られている。同様に、米国は国内の半導体材料メーカーの制裁の役割を果たすことができるも比較的限られている」と指摘している。
一方、最も影響を受けるとみられるのは国内半導体メーカーの昇維旭、青島芯恩、鵬新旭などの半導体メーカーで、米国のほか、日本、オランダの半導体装置や部品の供給を得ることができなくなる。工場の運営が制限される可能性があるとみられる。
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