米マイクロン、台湾メモリー工場建設を一時停止 労使紛争で

米メモリ大手のMicron Technology(マイクロン・テクノロジー)は、台湾・桃園市で進めていた総額45億ドル(約6,750億円)規模のメモリーチップ工場の建設を一時停止した。労使紛争を背景に工事が凍結されたもので、メモリー不足に拍車をかける可能性がある。

6日付米ブルームバーグなどが報じた。関係者によると、マイクロンは同工場の建設作業を事実上ほぼ停止し、工事中断の決定を台湾当局と取引先のサプライヤー1社に伝えたという。単なる工事スケジュールの調整ではなく、プロジェクトの今後の進め方に関わる決定であることを示している。

マイクロンは現時点で、建設をいつ再開するのか、当初の投資計画を見直すのかなど、今後の具体的な対応を公表していない。

工事停止の主な要因は、長期化している労使紛争だ。マイクロンの経営陣は、プロジェクトの先行きに対する不確実性を強めている。なかでも、これまでに地元労組と結んだ合意が覆される可能性を懸念しているという。

今回の事態は突然生じたものではない。AIサーバー需要が旺盛に推移し、世界のDRAMやHBM市場が好調となるなか、マイクロンの業績は大幅に回復している。これに伴い、従業員の利益還元を求める声も強まっていた。

10月7日、マイクロン桃園従業員組合はストライキ権限を取得するための投票を実施した。投票した組合員1,994人のうち99%が、ストライキ権限の付与に賛成した。労組の中心的な要求は、利益配分を恒久的な制度として整備することだ。具体的には、営業利益の15%を全世界の従業員に配分するよう求めており、会社側が一時金だけを支給する案は受け入れない姿勢を示している。

マイクロンが先に発表した2026会計年度の従業員報奨制度では、世界で6万人を超える従業員を対象に報奨金を支給する計画を示していた。台湾の従業員に対する現金ボーナスは100万台湾ドル(約500万円)だった。

これに対し桃園労組は、一時金では継続的な利益配分制度の代替にはならないと主張している。また、会社が労使調停中に労組との事前協議を行わず、報奨制度を発表したことにも反発している。

10月21日には、労使交渉をめぐる状況が分かれた。マイクロンと台中の労組は労使協定の締結に合意し、調停手続きを終了すると発表した。一方、桃園労組は従来の立場を維持し、利益配分の具体的な水準をめぐって合意に至らなかったため、ストライキ計画は撤回されなかった。

マイクロンは台湾に桃園と台中の2つの主要な労組を抱えている。台中で合意が成立したからといって、桃園での対立が解消したわけではない。経営陣は、すでに成立した合意が覆される可能性も懸念し、工事の凍結に踏み切らざるを得なかったとみられる。

生産体制を見ると、桃園拠点は主にDRAMの前工程であるウエハー製造を担っている。台中は台湾におけるマイクロン最大規模の事業拠点で、先端DRAMやHBM、後工程のパッケージング・テスト事業などを手掛けている。

マイクロンは台湾で約1万5,000人を雇用している。台湾は同社にとって重要なDRAM生産拠点であると同時に、AI向けメモリー市場を支える重要な生産基盤でもある。

マイクロンは10月15日、台中で新たな先端パッケージング・テスト施設を稼働させた。マニッシュ・バティア社長兼最高執行責任者(COO)はその際、同施設の2027年分の生産能力はすでに完売していると説明した。また、HBM市場はDRAM市場全体を上回るペースで成長し、少なくとも2028年までその傾向が続くとの見通しを示していた。

こうした状況で桃園の45億ドル規模の増産プロジェクトが停止したことは、先端メモリーの供給能力の立ち上がりが再び遅れることを意味する。AI向け計算需要によってメモリー価格が急騰しているなか、巨額投資を伴う新工場の停止は、すでに逼迫しているDRAMとHBMの需給を一段と引き締め、メモリー価格を高値圏にとどめる要因となる可能性がある。

ただし、現時点で公表されている情報が示しているのは、桃園で計画されていた45億ドル規模の工場建設が一時停止したという事実にとどまる。マイクロンの台湾における既存の生産活動には影響が出ていない。今回の工事停止だけを根拠に、世界のDRAMやHBMの供給が直ちに変化すると判断することはできない。

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