サムスン、米国に先端パッケージ工場新設へ 70億米ドルの追加投資を計画

29日付韓国経済新聞の報道によると、サムスン電子は米Tesla(テスラ)との間で総額165億米ドルの半導体受託生産(ファウンドリー)契約を締結したのに続き、米国への追加投資として70億米ドル(約1兆430億円)を投入し、先端パッケージング工場を新設する計画であることが明らかになった。

報道によれば、サムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)会長は近く米国を訪問し、進行中の通商交渉に参加する見通しで、同投資計画はその交渉中もしくは交渉終了後に正式発表される予定だという。この動きは、韓国政府と米国政府との間で進められている関税交渉において、韓国側が有利な立場を築くための交渉カードとしての側面も持つと見られている。

サムスンは2021年、米テキサス州テイラー市に5ナノメートル(nm)半導体工場の建設を発表したが、現地のインフレや人件費・資材費の高騰により、当初の計画よりも投資総額が170億米ドルに膨らみ、建設進捗も遅延していた。

さらに、24年4月には米ウォール・ストリート・ジャーナルが、サムスンが米国で先端製造工場、先端パッケージ工場、研究開発(R&D)センターを新設し、総投資額を約440億米ドルに拡大する計画を報じた。しかし、当時は経済の減速と需要の不透明感から、投資規模の一部が縮小されていたとされる。

状況を一変させたのが、今回のテスラとの165億米ドル契約だ。サムスンは今週月曜に提出した書類で、2024年の同社売上高の7.6%に相当するこの大型契約の存在を公表。契約は24年7月24日発効し、33年末まで有効。サムスンは顧客名を明らかにしていないものの、業界ではテスラが相手であるとの見方が強く、実際にテスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)もこの契約を認めている。

この背景を受け、サムスンはテイラー市の工場での量産体制を加速させると同時に、米国内で製造プロセスを完結できるようにするため、先端パッケージング工場の設立を決定した。米国には現在、量産可能な高性能パッケージング施設が存在せず、台湾積体電路製造(TSMC、台積電)が進める米国での先端パッケージ工場も稼働開始は29年以降と見込まれている。

このタイミングでのサムスンの動きは、米国市場でのファウンドリ競争において同社の地位を大きく押し上げる可能性がある。

なお、韓国経済新聞によると、米国での大規模投資を予定しているのはサムスンだけではなく、SKハイニックスもHBM(高帯域幅メモリ)生産を目的とした先端DRAM工場の新設を計画しており、NVIDIA(エヌビディア)など主要顧客の需要に応える体制を構築中だという。これらの投資は、韓国政府が米国との通商交渉でより良い条件を引き出すための包括的な戦略の一環とされている。

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