華為がクアルコム製チップの調達停止へ、TSMCやASMLにも影響か
中国の通信機器大手、華為技術(ファー ウェイ、広東省深セン市)が米半導体大手クアルコムからのチップ調達を停止するとの情報が業界内で注目を集めている。天風国際証券のアナリストが9月に明かした内容によると、華為は2024年から自社の新型スマートフォンを動かす半導体として、自社設計のプロセッサ「麒麟」を全面採用する。
華為のスマホ生産能力と出荷規模を踏まえれば、華為による自社チップの全面採用によって、クアルコムはスマホ向けチップのシェアを大きく失うことにつながりかねない。華為からの受注を失うだけでなく、華為のシェア拡大によって、華為以外の中国顧客のスマホ出荷量が縮小するリスクがあるためだ。消息筋によると、華為は2024年のスマホ出荷目標を6,000万~7,000万台に設定しており、チップ実装のサプライヤーに大量の追加発注を行ったとされる。
華為によるクアルコム製チップ調達停止の影響は、クアルコムにとどまらず、世界最大の半導体受託製造企業(ファウンドリ)である台湾積体電路製造(TSMC)や、蘭半導体製造装置メーカーのASMLにまで及ぶ。
華為はTSMCにとっての第2の得意先だが、米制裁の影響で、華為への出荷できない状況に陥った。こうした事態を受けて、TSMCは先ごろ、中国で操業する半導体工場向けの米国製半導体製造装置の供給について、米輸出規制の適用除外延長を申請した。
TSMCは、今のタイミングで中国市場を掌握しておかなければ、中国企業が半導体チップの生産能力と製造プロセスで技術的ブレークスルーを達成して自給自足を実現すれば、永遠に中国市場からの受注を失うと懸念している。
TSMCのこの懸念が現実となれば、その影響はASMLにも飛び火する。TSMCは毎年、ASMLから大量の露光装置を調達しているためだ。TSMCは今年、333億米ドルを投じてEUV(極端紫外線)露光装置を10台購入した。仮にTSMCの受注が縮小すれば、ASMLからの露光装置の買い付けも徐々に減っていくだろう。