中国の医薬品開発委託機関がAI創薬に注力、テック企業との提携相次ぐ
製薬会社から医薬品などの開発業務を受託している中国の医薬品開発業務受託機関(CRO=Contract Research Organization)の間で、テック企業と手を組むなどして人工知能(AI)技術を業務に活用する動きが広がっている。
CROは、医薬品の種類も多様化し、試験を繰り返すなど労働集約型業務の色彩が強い。近年はコストの効率化を狙って、中国の大手CROがAI技術を手掛けるテック企業と業務提携する事例が相次いでいる。
医薬品開発の維亜生物科技控股集団(上海市)は先月23日、AI企業の北京深勢科技(北京市)と業務提携し、AIなどを使った創薬を手がけていくと発表した。 標的RNA低分子医薬品のスクリーニングと創薬の効率を高めていくという。
そのほか近年だと、成都先導薬物開発股フン(上海市)や上海合全薬業股フン、上海皓元医薬股フン(上海市)、上海美迪西生物医薬股フン(上海市)、上海泓博医薬股フン(上海市)、杭州泰格医薬科技股フン(上海市)などの有名な国内CROとAI技術関連技術企業が提携し、医薬品開発プロセスのコスト削減と効率化を進めている。
太洋証券はこのほど発表したリポートで、米半導体NVIDIA(エヌビディア)の発表資料を引用し、AI創薬は開発プロセスの時間を3分の1に短縮するとともに、コストを200分の1までに抑えることができると指摘している。
企業の業績も回復している。CROを代表する企業である無錫薬明康徳新薬開発股フン(江蘇省無錫市)の2022年決算によると、売上高は前年比71.8%増の393億5,500万元(約7,577億2,400万円)で、控除後の純利益は前年比103.3%増の82億6,000万元となった。
業界の推計によると、中国のCRO産業の規模は、2011年の136億元から18年の678億元へと成長し、年平均成長率(CAGR)は20%以上となった。今後3年間のCAGRは20%〜25%で成長し、23年には172億米ドル(約2兆4,011億円)に達すると予想されている。
中国の株式市場では今年に入り、医薬・医療セクターに投資マネーが向かっており、そのペースはここにきて一段と速まっている。9日の株式市場は、泓博医薬や薬明康徳が5%を超える上昇となった。