中国、5年間で3.8兆元を情報通信インフラに投資へ

中国工業情報化部は7日、「情報通信業発展第15次5カ年計画(2026~2030年)」を発表した。計画では、2030年までに次世代通信網を全面的に構築し、安全性と技術力を兼ね備えた情報通信産業体制を整備する方針を示した。AIを中心とするデジタル化の進展を背景に、情報通信インフラ分野に5年間で累計3兆8000億元(約87兆4000億円)を投資する。
計画では2030年までに、広範囲をカバーし高い性能を持つ次世代通信網を整備するほか、技術的に先進的で安全・制御可能な情報通信産業体系を構築する。ネットワークとデータの安全保障能力を高め、情報通信産業の産業支援力とグローバル展開力を一段と向上させる。
毎日経済新聞によると、計画は全体の発展、イノベーション、グリーン化、インフラ、普及の5分野について、13の主要指標を設定した。単なる規模拡大ではなく、投資の「量」と産業の「質」の双方を重視する姿勢を打ち出している。
「中核―地域―エッジ」の多層型AI計算基盤を構築
計画は26項目の重点施策を掲げており、最初に「適度に先行した情報通信インフラの整備」を挙げた。
中国工業情報化部の情報通信経済専門家委員会委員で経済学者の盤和林氏は「適度に先行する」という考え方のポイントは、投資の規模とタイミングを適切に見極めることだと指摘する。
具体的には、第一に、地域や用途に応じて段階的に整備し、一律に進めないこと。実証実験から普及へと段階を踏む。第二に、需要と利用シーンを起点に整備すること。インフラを一斉に整備するのではなく、具体的な需要に応じて投資する。第三に、既存設備と新規投資を融合することだ。現在の5Gネットワークの一部設備についても、ネットワークを融合する形で6Gに活用することを想定している。
計画では、効率的に連携するAI計算基盤の構築に向け、全国一体型の計算力ネットワークの整備を加速する。「中核―地域―エッジ」という多層型の計算基盤を構築し、1万GPU級、10万GPU級以上の大規模AI計算クラスターを段階的に整備する。また、用途に応じて推論向けの計算能力を配置し、中国産のAI向け計算チップへの対応も強化する。
計画に盛り込まれた13の主要指標のうち、特に目を引くのがAI計算能力の大幅な増強だ。インテリジェント・コンピューティング能力は、2025年の1590EFLOPS(エクサフロップス、毎秒1000京回の浮動小数点演算)から、2030年には9800EFLOPSへと約6倍に引き上げる目標を掲げた。
盤氏は、中国の計算能力供給にはなおボトルネックがあると指摘する。中国製のAIサーバーは性能面で世界の大手計算基盤企業との差が残っており、2026~2030年の「第15次5カ年計画」期間には、国内でAI計算サーバーが供給不足になる可能性があるという。そのため、特にAI計算チップの技術的な自立が重要になる。
計画では、中国製AI計算チップへの対応強化に加え、「計算力経済」の発展、計算資源間の相互接続、計算力インターネットの構築、全国統一の計算力サービス市場の形成などを進める方針だ。
6G商用化を「適時」開始
次世代通信技術では、6G(第6世代移動通信システム)の実用化も視野に入れる。計画は、6Gの中核技術の研究開発を加速し、技術実証を継続するとともに、「適時に6Gの商用化を開始する」と明記した。
計算能力をネットワークに組み込む「コンピューティング・イン・ネットワーク」や、計算資源を認識する通信技術などの研究開発を進めるほか、衛星通信についても、衛星と地上間の高速伝送、衛星間ネットワーク、ルーティングなどの基盤技術を強化する。
さらに、6G対応スマートフォンの開発にも取り組む。オープンソースの「OpenHarmony(開源鴻蒙)」などを基盤に、AIエージェントとの通信や周辺環境の認識といった機能を備えたOSの開発を進め、アプリケーション・ソフトウエアのエコシステムを拡大する。
情報通信インフラ投資、量から多様化へ
工業情報化部の担当者は計画の解説で、2026~2030年は中国の情報通信産業が競争力と世界的な優位性をさらに高める重要な時期になると説明した。
国際的には、新興技術を巡る主要国間の競争が激化し、外部環境の不確実性が高まっている。一方、中国国内では経済・社会のデジタル化が加速し、AIをはじめとする次世代の情報通信技術が急速に進化している。こうした技術革新と異分野融合は、情報通信産業に大きな成長機会をもたらす一方、中国の情報通信業界には、インフラ能力、中核技術、産業応用、ガバナンスなどの面でなお課題が残っているという。
担当者は、今回の計画について「関係者の認識を統一し、力を結集して情報通信産業の質の高い発展を推進するうえで重要な意味を持つ」と述べた。
計画では、2026~2030年の5年間に情報通信インフラへ累計3兆8000億元を投資する。この規模について盤氏は、「第14次5カ年計画」期間の3兆7000億元をわずかに上回る水準であり、情報通信インフラへの投資がより合理的になっていることを示していると分析する。
重要なのは投資額そのものよりも、投資先の多様化だという。従来の移動通信基地局や「デュアル1万ギガ」ネットワークだけでなく、AI計算基盤や衛星通信などへの投資が拡大することで、情報通信インフラに対する需要が多様化していることが分かる。
盤氏はさらに、第14次5カ年計画と比べて第15次5カ年計画の情報通信インフラ投資は「成熟効果」が高まり、経済・産業への波及効果も大きくなると指摘する。
例えば、AI計算基盤への1元の投資が、3~4元のGDP押し上げ効果につながる可能性があるとしている。
中国政府は今後、5Gから6Gへ、通信インフラからAI計算基盤・衛星通信へと投資領域を広げながら、情報通信インフラを次世代の経済成長を支える基盤として位置付けていく構えだ。




