ニコンに注目、SEMICON China 2026

上海市で開催された半導体産業の見本市「SEMICON China 2026」で、日本の光学大手ニコンが注目を集めた。世界の半導体装置市場が激変する中、ニコンは中国市場への投資拡大と装置供給の優先度引き上げを宣言した。この動きは業績低迷からの自救策と見られる一方、中国市場の供給空白を突いて米国の輸出規制に正面から挑み、産業の頂点への返り咲きを狙う重要な布石とも解釈されている。

近年のニコンの財務データを振り返ると、かつての露光装置(リソグラフィ)の覇者が前例のない苦境に立たされていることがわかる。最新データによれば、ニコンは過去半年間に世界全体でわずか9台の露光装置しか販売しておらず、しかもすべて成熟プロセス向け製品に集中している。これと対照的なのが、オランダの巨人ASMLで、2025年には535台という販売記録を打ち立て、その大部分を高付加価値のEUVおよびDUV露光装置が占めた。

さらにニコンの精密機器事業の年間営業利益は約90%の急落を記録し、わずか15億4400万円にとどまった。こうした収益力と市場シェアの大幅な遅れが、ニコンに対して戦略上の抜本的な転換を迫っている。

ニコンにはかつて世界市場を席巻した輝かしい歴史がある。1980年代、日本政府が主導したVLSI計画を背景に、ニコンは米GCA社の技術を研究・追い越し、世界トップの地位を獲得した。当時ニコンは技術指標で米国に追いつくだけでなく、各装置に専属エンジニアを配置する「保姆式(きめ細かなサポート型)」の顧客サービスモデルを確立した。

しかし技術路線の選択ミスがニコンの転換点となった。ASMLが台湾積体電路製造(TSMC)のリン・ベンジャン氏と協力して液浸技術を開発する道を選んだのに対し、ニコンは従来の乾式路線のハードウェア改良にこだわり続けた。その結果、193nm波長以下の競争において完敗を喫した。

米国の制裁に真っ向から挑み、中国市場に全力を賭ける

米国が中国の半導体産業への輸出規制を強化し続ける中、ASMLは最先端のEUVおよび一部の液浸DUV装置の対中輸出を禁じられており、中国市場には巨大な供給の空白が生まれている。ニコンはこれこそが復活の最大の好機と鋭く見定めた。

米国政府は日本に対して共同封鎖への協力を求め続けているが、ニコンの露光装置の技術体系における米国技術の比率は極めて低く、いわゆる「デミニマス原則」による強制的な輸出規制の発動が難しい。これによりニコンはASMLよりも制裁を回避する余地が大きい。

今回の展示会でニコンは、中国市場向けに一連の「特色サービス」を提供することを明言した。まず、中古のi線装置とDUV露光装置の販売を解禁した。これは生産能力の拡張期にある中国の成熟プロセスウェーハファブにとって、まさに渡りに船だ。

次に、ニコンは特定の技術アップグレードと装置移設サービスの提供を約束した。これにより既存の中国顧客はニコンの純正技術を通じて旧型装置の寿命を延ばし、性能を向上させることができる。こうした全工程にわたる深い技術支援は、実質的に中国企業がより安定したサプライチェーンを構築するための支えとなる。

ダウングレードプラットフォームと乾式DUVによる反撃

中国市場向けにニコンが繰り出す最も核心的な「武器」は、新たに発表した乾式DUV露光装置「NSR-S333F」だ。この装置の開発コンセプトは戦略的に巧みで、ニコンのフラッグシップ液浸露光装置「NSR-S636E」の技術プラットフォームをベースに「ダウングレード」して開発された製品だ。

乾式装置でありながら、先進プラットフォームの機械構造とアライメントシステムを受け継いでいるため、オーバーレイ精度(重ね合わせ精度)は驚異の4nm以下を実現している。

中国国産の乾式DUV装置と比較すると、ニコンのNSR-S333Fは光源波長と解像度においては大差ないものの、商業的な成熟度とオーバーレイ精度において明確な優位性を持つ。この装置はロジックチップ、メモリチップ、イメージセンサーの製造に幅広く対応する。

ニコンは2025年末に受注を開始し、2026年下半期に納入する予定だ。先進プラットフォームの優位性を活かして成熟市場に降りてくるこの戦略は、ASMLが手の届かない領域で主導権を取り戻そうとするニコンの野心を鮮明に示している。

ニコンの戦略が成功するかどうかは、米日両国からの政治的圧力の下でサプライチェーンの安定を長期にわたって維持できるかにかかっている。上海の展示ブースでのニコンの公式表明は、本質的には一つの商業的な大博打だ。中国市場と深く結びつくことで、その巨大な市場規模を梃子に精密機器事業のキャッシュフローと利益を回復させ、それを技術開発に還流させることで、次世代半導体装置の競争において再び発言権を取り戻そうという試みである。

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