米グーグルのAIプロセッサ「TPU」採用のOCS技術に注目

米Google(グーグル)が第7世代のAI特化プロセッサ「TPU」に採用したOCS(Optical Circuit Switching、光回路交換)技術が注目されている。OCSはコスト削減の鍵で、価格は米NVIDIA(エヌビディア)GPU(画像処理半導体)の5分の1でありながら、特定の用途ではより強い推論性能を発揮する。そのためMeta(メタ)などの大口顧客にも採用され、グーグルの新たな成長源となっている。中国の光モジュールメーカーも恩恵を受ける見通しだ。
ここにきてAI開発で遅れていたとされるグーグルの躍進ぶりが顕著となっている。11月に発表したAI(人工知能)モデル「Gemini 3 Pro」「Nano Banana Pro」の高い性能のほか、OCS技術を採用した最新プロセッサTPUが特定の用途ではより強い推論性能を発揮することが分かり、その価格の低さもあって米OpenAIやAnthropic、Metaなど大口顧客が採用する動きが加速している。
OCS技術の先進性
OCSの特徴は、従来のスイッチとは異なり、光ファイバー信号を光電変換せずに光のまま切り替える点にある。光ネットワークは、単なる「接続」から「交換」へと知能化が進み、従来の電気式スイッチが抱える帯域と消費電力の制約を解消する。低消費電力、低コストに加え、低遅延、低ネットワーク負荷、柔軟なルーティング、クラスタ構築の容易さなど多くの利点を持つ。過去5年間で、グーグルはOCS分野に5億〜10億ドルを投じており、まさに先駆者だ。
OCSはCPOなど光電融合型の交換方式の代替にはならず、光通信のさらなる拡張・深化を意味している。エヌビディアが「OCP EMEA 2025」で述べたように、現時点で光スイッチの製造コストは依然として電気スイッチより高い。CPO光モジュールとOCS光スイッチを組み合わせることで、消費電力の一段の削減が可能になる。
中国のサプライヤーにも恩恵
中国には多数のコンピューティングパワー関連企業が存在し、これまでエヌビィアへの光モジュール供給のみならず、海外クラウド企業やAIチップ大手とも深い協力関係を築いてきている。国内の主要光モジュール企業はすでにOCS事業やグーグル向けサプライチェーンに深く関与している。400Gから800G、1.6T、そして3.2Tへと進化してきた高速光モジュールの精密製造で培った技術はOCS関連製品にも転用できる見通し。大規模生産においても品質や経済性が保証され、「強者がより強くなる」構図が続く可能性が高い。
そのため、グーグルTPUの市場拡大局面では、中国国内のコンピューティングパワー関連企業も増加する需要の恩恵を受けることが期待されている。
- 中際旭創:グーグル向け光モジュールの主力サプライヤー。海外子会社TeraHopがシリコンフォトニクスOCSスイッチを展開。
- 長芯博創:グーグル向け光デバイス供給企業。
- 騰景科技:多様なOCS製品を持ち、複数方式に対応。
- 德科立:iPronicsと共同で光導波路型OCSを開発。
- 光庫科技:武漢捷普を買収しOCS事業を展開。
- 炬光科技:大面積レンズや精密V溝アレイなどを供給。
- 賽微电子:国内外にOCS用MEMSラインを持ち、長年の実績を保有。
- 光迅科技:OFC2024でMEMS型OCSの最新製品を発表。



