中国、SiC基板の生産拡大進む 12インチも実用化へ

世界で炭化ケイ素(SiC)半導体材料産業が加速的に発展する背景のもと、中国の地場企業は8インチSiC基板の分野で量産能力を確立し、応用分野が拡大している。同時に、12インチ技術の研究開発も段階的な成果を収めており、業界の長期的発展の基礎を築いている。

天岳先進は2024年に8インチを中心とした基板の年産能力が46万枚に達し、25年には60万枚に引き上げる計画だ。

天科合達も24年に8インチ基板の本格的な生産を実現し、25年の基板総生産能力は50万~80万枚(8インチを含む)を計画し、エピタキシャルウェハーの生産能力は25万枚。北京と徐州の基地を核とし、深圳の合弁会社である重投天科が6~8インチ基板とエピタキシャル生産能力をさらに補強している。また、8インチ製品は国内外の主要デバイスメーカーの検証を通過し、複数年のLTA(長期供給契約)量産受注を獲得している。

三安光電の湖南基地は25年上半期に8インチ基板の生産能力が月間1000枚(年間約1.2万枚)、エピタキシャル生産能力が月間2000枚(年間約2.4万枚)に達する見込みだ。重慶工場ではSTマイクロエレクトロニクスとの合弁で展開し、年間48万枚の8インチ基板生産能力を計画しており、2025年2月にはラインが稼働し、検証用サンプルが出荷されている。

爍科晶体、南砂晶圓、晶盛機電(子会社の浙江晶瑞)は少量または規模化生産を実現しており、生産能力は年間5万~10万枚の規模だ。

爍科晶体は24年10月の第2期プロジェクト稼働後、6~8インチ基板の生産能力を新たに年間20万枚増強し、4~8インチの総生産能力で世界トップ3に躍進した。

南砂晶圓は24年に済南北方基地で8インチプロジェクトが正式に稼働し、同年の生産能力は年間5万枚に達し、25年には8インチの生産能力を年間50万枚に引き上げる計画で、広州、中山、済南の3拠点体制を構築する。

晶盛機電は24年末に8インチ基板の生産能力が月間3000枚(年間約3.6万枚)に達し、25年には年間6万枚への引き上げを計画している。

寧夏創盛の年間60万枚の8インチ基板関連プロジェクトは25年7月に着工する予定であり、マレーシアのペナン基地の第1期では年間24万枚の8インチ生産能力も計画されており、国内外での生産能力の協調推進が進んでいる。

技術的ブレイクスルーも

国内企業も結晶成長と欠陥制御の中核分野で技術的優位性を確立しつつある。

天岳先進は業界で初めて液相法を用いたマクロ欠陥のない8インチSiC基板の製造に成功し、液相法でP型炭化ケイ素基板を生産する企業の先駆けの一つ。結晶の高品質成長における界面制御と欠陥制御の課題を克服し、その基板の有効厚さは業界平均の20mmを大きく上回る60mmを超えている。同時に、マイクロパイプのほぼゼロ化、積層欠陥の排除を実現し、ベース面転位(BPD)、らせん転位(TSD)、刃状転位(TED)の密度も低水準にある。

天科合達は、世界で初めて8インチ低抵抗基板を発表し、抵抗率を7〜12mΩ・cmに制御し、従来のN型基板の半分程度に抑えている。これは、低抵抗率の条件下で積層欠陥密度が高すぎるという業界の難点を克服したもので、試算によると、この基板の抵抗が1mΩ・cm下がるごとに、デバイスのオン抵抗が2〜4%低下し、ハイエンドパワーデバイスの性能向上に重要なサポートを提供している。

晶型制御とドーピング均一性の面では、南砂晶圓が大型結晶成長の温場と流場の設計を最適化することで、単一の4H結晶型8インチSiC結晶の成長に成功し、加工後の基板の4H結晶型面積比率は100%に達している。同時に、「ゼロに近いろせん転位」密度の制御を実現した。晶越半導体は8インチ基板の性能において優れており、基底面転位密度(BPD)を20個/cm²未満、総転位密度(EPD)を1000個/cm²未満に抑えることができ、コアパラメータは国際的なトップレベルに達し、ハイエンドパワーデバイスの材料に対する厳しい要求を満たしている。

自動車、エネルギー、家電の3大分野で導入拡大

自動車分野は、8インチSiC基板の中核的な市場だ。天岳先進は22年にIATF16949車載グレードシステム認証を取得し、その8インチ基板は国際的な一線級のパワー半導体メーカーから継続的な大規模量産受注を獲得している。23年には、国際的なトップ自動車メーカーから「優秀サプライヤー賞」を授与されている。

三安光電は理想汽車と合弁で蘇州斯科半導体を設立し、第1期生産ラインでフルブリッジパワーモジュールの量産を実現している。重慶工場で生産される8インチ基板は、STマイクロエレクトロニクスとの合弁会社である安意法公司に特化して供給され、車載向けSiC MOSFETの安定供給を保証している。

天科合達の8インチ低抵抗基板は、800V駆動システムや高圧急速充電などの車載向けに適応、車両のエネルギー損失を効果的に低減している。天岳先進が2024年に納入した低抵抗P型8インチ基板は、高性能SiC-IGBTの開発プロセスも加速させ、車載超高圧パワーデバイスの国産化を推進している。その他、AIチップの先端パッケージング市場などの分野も、SiC需要の解放を牽引することが期待されている。

12インチの将来性

国内企業が8インチ炭化ケイ素基板の生産能力と応用を拡大する一方で、12インチ基板技術の展開も積極的に進めている。

現在、国内では少なくとも天岳先進、爍科晶体、天科合達、南砂晶圓、晶盛機電、合盛硅業、晶越半導体、天成半導体、科友半導体、同光股份(12インチインゴットは継続的な研究開発中)の10社が12インチSiC基板の開発に成功しており、技術的な優位性が初期的に現れている。

コストと効率の面から見ると、12インチ基板は単一ウエハーのチップ製造面積を大幅に拡大でき、天岳先進のデータによると、適格チップの生産量を著しく向上させることが可能だ。合盛硅業の試算では、12インチウェハーから切り出せるチップ数は6インチウェハーの約4倍に増加する。

科友半導体は、12インチ技術へのアップグレードが単位コストを40%削減できると指摘し、SiC基板の規模化応用のコスト基盤を確立している。性能適応性の面では、天科合達が発表した12インチヒートシンクグレード基板は、AIや自動運転分野の高性能チップパッケージングの放熱ニーズを満たすことができる。爍科晶体が研究開発した12インチ高純度半絶縁型基板は、ハイエンドRF(高周波)デバイスにも使用でき、より高い電力と統合度を持つ応用シナリオに適応する。

しかし、12インチSiC基板の実用化は、依然として2つの核となる課題に直面している。技術の成熟度の面では、大口径結晶の成長過程で、熱場分布の不均一、シード結晶の位置合わせの困難さ、厚さ制御精度の不足、結晶欠陥リスクの増大などの問題が存在する。晶越半導体は、熱場構造設計、シード結晶の接着プロセスパラメータなどの系統的な最適化を通じて、結晶割れの難題を解決する必要があり、現在、ほとんどの企業の12インチ製品はまだラボサンプルまたは中間試作段階にある。産業チェーンのサポートの面では、12インチデバイス製造装置、エピタキシャルプロセス、パッケージング技術がまだ完全ではないため、短期間で市場の需要が生産能力を急速に消化することは難しい。また、企業は適応する装置の研究開発に大量の資源を投入する必要があり、例えば天成半導体は第3世代12インチ結晶成長炉の研究開発を推進しており、産業化の難易度をさらに高めている。

将来の予測として、短期(25年〜28年)では、12インチSiC基板は技術検証と少量試作が中心となり、ハイエンド産業、先端パッケージング、ARなどの細分化されたシナリオで優先的に応用され、8インチ基板と相互補完的な構造を形成するとみられている。

自動車、風力・太陽光発電・蓄電などの産業分野で8インチ基板は依然として市場の主流だが、長期(28年以降)では、技術成熟度の向上と下流産業チェーンのサポートの充実に伴い、12インチ基板は徐々に車載向け、大規模蓄電などの分野で、8インチ基板の一部を代替する見通しだ。

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