米エヌビディア、25年Q2に対中輸出規制で80億米ドルの損失見通し

米半導体大手のNVIDIA(エヌビディア)は現地時間28日、2025年度第1四半期(1〜3月)の売上高が市場予想を上回ったものの、第2四半期(4〜6月)の売上高は市場予測を下回るとの見通しを発表した。特に、米国政府による対中国輸出規制の強化により、最大80億米ドル(約1兆1664億円)の売上損失が発生すると見積もった。

米国は長年にわたり、中国への先端技術輸出を制限しており、エヌビディアのAI向け半導体チップの販売にも影響が出ている。中国は世界最大級の半導体市場であり、この規制は同社にとって大きな打撃となる。

一方で、エヌビディアは中東での事業拡大を進めており、今月初めにはアラブ首長国連邦(UAE)で総面積約26平方キロメートルの大規模データセンターを建設する契約を締結した。同施設には最終的に最大5ギガワット(GW)のAIインフラが導入される見通し。また、サウジアラビアや台湾においても類似のプロジェクトが発表されている。

コレット・クレス最高財務責任者(CFO)は、アナリスト向けの電話会議で「近い将来、数十ギガワット規模のエヌビディアAIインフラが求められるプロジェクトが複数立ち上がるだろう」と述べた。しかし短期的には、中国市場での売上が減少し、データセンター事業の収益にも影響が出ているという。

現在、エヌビディアが中国に合法的に輸出可能な唯一のAIチップ「H20」にも新たな制限が加えられており、同社は4月に約55億米ドルの損失を計上する見通しを示していた。Jen-Hsun Huang(ジェンスン・ファン)最高経営責任者(CEO)は5月、これらの規制により総額で150億米ドルの収益が失われる可能性があると発言している。

今回の決算発表では、H20の一部部材が再利用可能だったため、第1四半期の実際の損失は予想を下回る25億米ドルにとどまったという。第1四半期にはH20関連で46億米ドルの売上を計上しており、中国市場は同四半期全体の12.5%を占めた。第2四半期にはH20に起因する損失が80億米ドルに達する見込みだ。

第2四半期の売上見通しは450億米ドル(±2%)であり、アナリストの平均予想459億米ドルを下回った。このガイダンスにはH20制限による80億米ドルの売上減少が織り込まれている。

米国のあるアナリストは「H20制限の影響は予想より小さかった。中国の顧客が規制発動前に在庫を積み増していたことで、4月期の業績を下支えした」と分析。「貿易摩擦と関税がデータセンター拡張に与える影響は、今後のAIチップ需要にとって潜在的なリスクだ。エヌビディアの市場支配が終わるということではないが、地政学的リスク、競争、経済的課題に対応し続ける必要がある」と指摘している。

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