トランプ氏「対中関税さらに50%上乗せも」、AI・半導体企業に逆風

トランプ米大統領は7日、中国が米国による相互関税への報復措置を撤回しなければ、9日から中国製品に50%の上乗せ関税を課すと述べた。撤回しない場合、中国側が求める交渉も打ち切るという。トランプ政権による関税の“核爆弾”は、「米中貿易戦争2.0」時代の幕開けを予感させ、AI(人工知能)や半導体の世界トップ企業に脅威をもたらし始めた。
中国政府は4日、米国からの輸入品に34%の追加関税を課すと発表した。半導体製造設備、半導体、先進医療設備なども対象で、10日に発動する。さらに商務部と税関総署は、米国企業16社を輸出規制・管理の対象リストに加えるなど6つの対抗措置を発表した。これらは、トランプ米大統領が2日、世界各国からの輸入品に対して「相互関税」をかけると公表したことへの報復措置。トランプ政権が発表した新たな関税政策は、中国への関税率が34%で、既にかけた計20%の追加関税とあわせると54%になる。これに追加関税の50%をプラスすると、合計104%の驚異的な関税率になる計算だ。
さらに米通商代表部(USTR)は今年3月11日、成熟プロセスによって中国で生産された「レガシー半導体」に関する公聴会を開き、関連関税をさらに引き上げるかどうかの可能性を探った。レガシー半導体は、自動車や洗濯機、通信設備などに広く使われている。
米中の追加関税の応酬は、世界の半導体産業や供給網、中国の半導体輸入に一定のインパクトをもたらすのは必至とみられる。
2024年の中国の対米半導体輸入額は1230億4000万元(約2兆4707億円)で、中国の対米輸入額全体の10.6%、中国の半導体輸入額の3.76%を占めた。品目別の輸入額や輸入ウェートでみると、集積回路(IC)や半導体製造設備・部品がトランプ関税の影響を大きく受ける見通しだ。
サプライチェーンの角度では、設計、製造、パッケージング、製造設備、材料など半導体の川上・川下業界が総じて、一定の影響を受けるとみられる。アップル、インテル、テキサス・インスツルメンツ、アナログ・デバイセズといった半導体・AI企業はいずれも米国あるいは世界各地に半導体工場や関連施設を保有しており、中国向けに製品を輸出する場合は、追加関税の影響は免れない。
アップルは現在、スマートフォンの組み立ての9割を中国で行っており、今後は関税コストを自ら負担するか、消費者に転嫁するかの二択を迫られることになる。モルガンスタンレーの試算によると、米国の対中関税によって、米Apple(アップル)のコストは年間85億米ドルが積み増され、スマートフォン「iPhone 16 Pro」の部品コストは従来の549米ドルから846米ドルへと54%上昇する。これは、iPhoneの主要材料である鉄鋼とアルミ材に係る関税によって生じるコストだ。
アップルがこの関税コストをすべて消費者に転嫁すれば、iPhone16 Pro Maxの米国での小売価格は現在の1599米ドルから2300米ドルに跳ね上がる。
一方で、トランプ関税は半導体産業の再構築を促す作用もある。ディグローバリゼーションの流れは中国の内需拡大や、中国独自の半導体供給網の構築を促し、竜芯中科、華大九天、海光といったAI、半導体領域の中国企業に商機をもたらすとされる。
3月末に開かれた2025年中関村フォーラム年次総会では、次世代の中国製サーバーCPU「竜芯3C6000/D 2U」と、プロセッサ「竜芯3C6000/D」が初公開された。重要部品の国内調達率は100%で、汎用コンピューター、大型データセンター、クラウドコンピューティングセンターの計算需要を満たす。竜芯3C6000/Dのセルフテスト性能は、インテルXeon Gold 6338プロセッサに相当する。
中国産半導体の代表格である「竜芯」は、中国科学院と北京市政府が2008年に共同出資で設立した竜芯科技(ロンシンテクノロジー)が開発・製造を手掛ける。竜芯科技の2024年度本決算は、売上高が5億600万元だった。