米中半導体戦争、汎用品に戦線拡大へ

米国の輸出制限によって中国は、先端半導体から成熟したレガシー半導体(汎用半導体)の生産を積極的に拡大している。中国の汎用半導体の生産能力は2025年末に世界の28%を占めるようになり、27年はさらに39%の生産シェアを持つようになると予想されている。
海外紙トムズハードウエアの記事によると、成熟プロセス(通常は20nm以上)で製造される汎用半導体は、民生用電子機器や自動車、家電などの分野で使われ、半導体メーカーにとって重要な収入・収益源であると同時に、開発資金源でもある。汎用半導体分野での中国企業の存在感が強まるにつれて、欧米の半導体企業は巨大な圧力に直面するようになった。
産業オブザーバーは、中国企業の積極的な生産拡大と高い価格競争力は、欧米を始めとする世界の汎用半導体製造業にインパクトを与えるようになると指摘。ドイツの半導体メーカーの販売部門責任者も、「かつて炭化ケイ素(SiC)ウエハー大手の米ウルフスピードが1500米ドルで販売していた6インチSiCウエハーは現在、広州南砂晶園半導体(Guangzhou Summit Crystal Semiconductor)がわずか500米ドルで販売している。このような巨大な価格差により、欧米企業はシェアの維持が難しくなっている」と述べた。
米IT調査会社のIDCの予測によると、中国の半導体企業は今後、半導体国産化政策の下で、世界の同業よりもさらに積極的に生産拡大を進める。中国での増産が続くにつれて、汎用半導体が供給過剰に陥るとの予測もあり、米中半導体戦争への関心はすでに先進半導体から汎用半導体へと広がっている。
中国企業が価格競争力を強みにシェアを拡大すれば、欧米企業は価格を引き下げざるを得ず、利益が圧縮され、最終的に市場撤退を迫られるケースも想定される。
さらに欧米政府は、将来的に中国製汎用半導体に対する市場の依存度が過度に高まることで、自国を含むその他の国のサプライチェーンがリスクにさられることを懸念している。地政学的な緊張の高まりが、この種の懸念をさらに増大させている。
バイデン米政権はホワイトハウスを通じて2024年12月23日、中国の汎用半導体を対象に、通商法「301条」に基づく調査の発動を命じたと発表した。さらに米政府は、汎用半導体の国内生産能力拡大に向け、半導体製造企業のグローバルファウンドリーズとテキサス・インスツルメンツに「CHIPSおよび科学法(CHIPS法)」に基づく助成金を提供した。
中国商務部は今年1月16日、「バイデン政権が国内の半導体業界に多額の助成金を与え、それによって米企業が不公平な競争優位性を獲得し、かつ汎用半導体製品を中国向けに低価格で輸出していることは、中国国内の産業の合法的な権益を損ねている」として、法に基づく調査を開始すると発表した。