“トランプ関税”に警戒する中国、25年は企業の投資縮小か
米国の第47代大統領に共和党のドナルド・トランプ氏(78)が20日正午(日本時間21日午前2時)に就任した。早ければ年初にも中国製向けの追加関税措置などが年初に発表するとみられており、中国企業は今年から資本的支出を減らし始め、景気の下押し圧力になる可能性がある。一方、世界で中国が台頭しつつある先端技術分野での投資などが内発的発展を下支えするとの分析も出ている。
トランプ大統領は、ワシントンの連邦議事堂で開かれた就任式で、「私たちは共に乗り越えてきたすべてのことを経て、米国史上最も偉大な4年間を目前に控えている。皆さんのご支援により、私たちは米国の約束を取り戻し、私たちが愛する国を再建する」などと演説したが、対中政策の方針については触れなかった。
第一財経によると、トランプ政権下で予想される中国に対する追加関税措置について、スイス銀行の中国人エコノミストの汪涛氏は、予想されるシナリオとして、「中国から輸入される約4分の3の製品に対する追加関税を60%に引き上げる対中制裁措置を2025年第1四半期(1〜3月)中に発表し、同年第3四半期(7〜9月)から26年第2四半期(4〜6月)にかけて段階的に適用する」とのタイムラインを描いた。
ただ、「具体的な適用のタイミングや、適用の範囲、関税率に関してはかなり大きな不確実性がある」とも指摘。その上で、「中国企業の輸出業務にはっきりと影響が現れるのは26年以降だが、企業は25年から資本的支出を減らし始める可能性がある」と警戒感を示した。
その上で、「市場は中国当局が今後打ち出す可能性がある刺激策に期待している」と指摘。「仮に米国が25年9月から対中関税を段階的に上乗せし始めるとすれば、中国政府は政策支援を強化するだろう」と予想した。25年は依然として純輸出が中国のGDP(国内総生産)成長を後押しするが、26年は輸出の縮小が製造業の資本的支出の妨げとなり、内需不足からさらなるデフレ圧力に直面する可能性があるとして、「中国政府が財政支援を強化すれば、インフラ投資を底上げし、不動産市場を安定させることができる」との見方を示した。
ゴールドマンサックスの孫璐アナリストは、“トランプ関税”に対応するための中国人民銀行(中央銀行)の動きについて、当面の対中追加関税が10%の上乗せレベルにとどまれば、人民銀は、外国為替市場での人民元取引の基準値となる「中間値」を今後数週以内、さらには1~2カ月内に小幅に引き下げる可能性があると予想した。
AIや新エネルギーなどが内発を促進
一方、中国新聞網によると、海上シルクロード研究院の黄理涵・院長は、トランプ政権での米中関係について「慎重ながらも楽観的だ」と話す。 米国政府は中国に対して強硬策を取り続けるだろうが、「中国の内発的なダイナミクスと経済的な回復力が最大の優位性になる」と指摘。「さまざまな経済社会に及ぶ技術革命が中国の台頭を促すだろう。 AI(人工知能)や新エネルギーといった分野の変化によって中国は外圧を内発的な発展の勢いに変えるチャンスをより一層つかむだろう」 と黄氏は分析した。