設立5年の中国SMEC、車載パワー半導体受託製造の中国最大手に成長
中国ファウンドリー(半導体受託生産)大手の芯聯集成電路製造(SMEC)は、創設からわずか5年で車載半導体受託製造の中国最大手に躍進した。新エネルギー車大手に向けて、SiC(シリコンカーバイド/炭化ケイ素)を用いた車載パワー半導体を受託製造しており、驚異的な成長速度の速さが注目を集めている。
SMECの前身は、中国の半導体受託製造(ファウンドリー)最大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)に属する中芯集成で、2018年に分離・独立した。同年は米テスラが電気自動車(EV)「Model 3」の量産を開始し、世界にEVブームが巻き起こった。その商機を嗅ぎ取ったSMECは、車載パワーデバイス分野への参入を決定。その3年後に中国が迎えたEVブームと半導体の国産化を追い風に、同社の車載事業の業績貢献度は21年の4%から23年には47%へと拡大。中国のEVサプライチェーンにおいて欠かせない存在になった。
中国メディアの「晩点LatePost」によると、SMECは2023年の中国のSiCデバイス出荷量で6位だった。上位5位は、STマイクロエレクトロニクス、インフィニオン・テクノロジーズ、ウルフスピード、オン・セミコンダクター、ロームと海外勢が独占した。これらの海外大手が標準化された粗利益率の高い製品を提供しているのに対して、SMECは市場の変化に対応した製品をワンストップで提供し、顧客粘着性を大幅に高めた。
足元で、蔚来汽車、理想汽車、小鵬汽車、比亜迪(BYD)といったEV大手と提携関係を築いたほか、中国政府系送電会社である国家電網傘下の大手電力設備メーカーの国電南瑞科技とも踏み込んだ提携を実現。寧徳時代新能源科技(CATL)、陽光電源などとの共同出資で、新会社「芯聯動力」を設立した。競争力を大幅に高め、中国のEVブランドの9割、太陽光発電バッテリーエネルギー貯蔵システムの8割超に製品を供給するようになった。
SMICの発表によると、23年の売上高は前年比15.6%増の53億2400万元(約1165億9600万円)で、このうち本業からの収入は24.1%増の49億1100万元。輸出売上高も42.6%増の5億6000万元と好調だった。
市場調査会社のYole Groupによると、SiCに代表される第3世代パワー半導体の27年の市場規模62億9700万米ドル(約9913億円)、うちEV向けは49億8600万米ドルに達する見通しだ。同分野では、テスラのサプライヤーを勝ち取ったSTマイクロエレクトロニクスが世界シェア40%を独占するが、中国では、SMECがその柔軟なビジネスモデルを強みに、国産品への代替を促す立役者となっていきそうだ。