米エヌビディアが光電融合のCPO量産開始、中国の光通信業界にも転機

(NVIDIAのウェブサイトより)

米半導体大手のNVIDIA(エヌビディア)は14日、イーサネット向けシリコンフォトニクス・スイッチ「Spectrum-X」が量産段階に入ったと発表した。200G/レーンのCPO(Co-Packaged Optics、光電共封止)イーサネット・スイッチシステムとして、世界で初めて大規模な商用化を実現した事例とされる。CPO技術が研究室での検証段階から大規模商用化へ移行したことを示す節目となり、中国本土の光通信産業チェーンにも大きな影響を与える可能性がある。

同製品は、光エンジンとスイッチチップを深く統合するCPO技術を採用している。NVIDIAによると、従来方式と比べてネットワークの電力効率は5倍、AIアプリケーションの連続稼働時間は5倍、平均故障間隔(MTBF)は10倍に向上するという。
今回の発表は、CPO技術が研究室での検証段階から大規模商用化へ移行したことを示す節目となる。中国本土の光通信産業チェーンにも大きな影響を与える可能性がある。

CPOの商用化が転換点に

CPO(Co-Packaged Optics、光電融合)は新しい概念ではない。2022年には米Broadcom(ブロードコム)がアーキテクチャー「Tomahawk」をベースとしたCPOスイッチの試作機を披露し、NVIDIAも25年のカンファレンス「GTC」でSpectrum-X PhotonicsとQuantum-X Photonicsという2つのCPO製品ラインを発表していた。

しかし、NVIDIAがSpectrum-Xの全面量産を発表したのはさらに1年以上後の26年8月。CPOが技術検証から大規模商用化へ移行したことを示している。

この転換を後押しした最大の要因は、AI(人工知能)コンピューティングクラスターの拡大による圧力だ。GPU(画像処理半導体)クラスターの規模が数千基から10万基、さらには100万基規模へ拡大すると、データセンター内部の通信における消費電力と帯域幅のボトルネックが深刻になる。

800Gbps対応の着脱式トランシーバー1個当たりの消費電力は9~15ワット(W)に達する。GPUを12万8000基備える計算クラスターでは、約50万個のトランシーバーが必要となり、総消費電力は大きな負担になる。

CPOは、フォトニックチップとスイッチASICを同一基板上にパッケージングすることで、光電信号の変換経路をセンチメートル単位からマイクロメートル単位へ短縮する。これにより、リンク損失は約20dBから4dBへ大幅に低下し、スイッチ1台当たりの消費電力は7.0キロワット(kW)から3.95kWへ減少するという。

ただし、CPOの量産開始が着脱式光モジュールの終焉を意味するわけではない。複数の中国A株上場企業やクラウドサービス事業者によると、2026~2027年のネットワーク計画は依然として着脱式方式を中心としており、今後2~3年以内にCPOを大規模導入する計画を持つクラウド事業者はないという。

台湾の調査会社TrendForce(トレンドフォース)のデータによれば、現在CPOがAIデータセンター向け光モジュールに占める浸透率は約0.5%にすぎず、商用化の初期段階にある。米調査会社IDCは、大規模な商用化が27~28年にかけて徐々に進むと予測している。

このため、従来型の光モジュールとCPOは今後も長期間にわたって併存し、業界は2つの方式が同時に成長を支える段階に入るとみられる。

米Yoleのデータによると、CPO市場は24年の4600万ドル(約73億2320万円)から、30年には81億ドルへ急拡大する見通しだ。年平均成長率は137%に達する。この成長率は、AIコンピューティングネットワークが高速光インターコネクトを強く必要としていることを示している。同時に、CPOをめぐる産業チェーンの競争が始まったばかりであることも意味する。

CPOが光インターコネクトの価値チェーンを再編

CPOが従来の光通信産業チェーンに与える影響は構造的なものだ。従来の着脱式光モジュールでは、光モジュールメーカーが中核的な地位を占め、レーザー、変調器、検出器、ドライバー、TIA、DSPなどの部品を一体化していた。

これに対してCPOは、スイッチチップ、シリコンフォトニクス・エンジン、高速パッケージングを同一システムに統合する。価値チェーンの中心は、モジュール組立からチップレベルの集積へと移行する。

この変化は、産業チェーン各分野の価格交渉力にも直接影響する。従来のアーキテクチャーでは、中際旭創、新易盛など中国本土のメーカーが、高速データ通信モジュールの量産技術、顧客ごとのカスタマイズ、歩留まりの向上、大規模納入能力を武器に、世界市場で高い地位を築いてきた。
中際旭創の2025年売上高は382億元(約9015億円)で、前年同期比60%増加した。同社の1.6T光モジュールの受注は26年末まで埋まっているという。

しかしCPOのアーキテクチャーでは、価値の中心がシリコンフォトニクスチップの設計、フォトニックデバイスの製造、先端パッケージング工程へと移る。これらはまさに、中国本土企業が弱みを抱える分野だ。

CPOは故障の形態と保守の考え方も変える。従来の着脱式光モジュールで故障が発生した場合、個別のモジュールを交換すれば復旧できる。一方、CPOでは光エンジンとスイッチチップが深く結び付いているため、フォトニックチップが故障すると、8~32個のインターフェースが同時に機能しなくなる可能性がある。

このように故障の影響範囲が広がるため、部品の信頼性とパッケージングの歩留まりに対する要求は極めて高くなる。中国本土メーカーがCPOのサプライチェーンへ参入する際の技術的なハードルも、同時に高まることになる。

NVIDIAのCPOを支える5社

NVIDIAが公表したCPOスイッチのサプライチェーンは、5社で構成されている。半導体受託生産(ファウンドリー)世界大手の台湾積体電路製造(TSMC、台積電)が先端シリコンフォトニクス工程の製造を担当し、米国の光通信用デバイスおよび産業用・半導体レーザーの大手メーカーLumentum(ルメンタム)がレーザーチップを供給する。台湾のSPIL(矽品精密工業)はウエハーレベルおよびチップレベルのパッケージングとテストを担い、中国の天孚通信(TFC)がレーザーモジュールのサブアセンブリーを組み立てる。鴻海(ホンハイ)精密工業はスイッチシステムの組み立てを担当する。

5社のうち、中国本土企業は天孚通信だけだ。同社の主力製品であるFAU(Fiber Array Unit)とシリコンフォトニクス・エンジンのパッケージ部品は、CPOに必要な光電パッケージングと高い関連性を持つ。

NVIDIAによる上流サプライチェーンの管理は、単なる調達協力にとどまらない。26年3月、NVIDIAはLumentumと米Coherent(コヒレント)にそれぞれ20億ドル、合計40億ドルを投資すると発表した。両社とは複数年の購入契約を締結し、生産能力を優先的に取得する権利も確保した。

Lumentumのマイケル・ハールストンCEOは、同社が現在保有するInP関連の5つの生産拠点の供給量は、顧客需要を30%以上下回っていると警告している。LumentumとCoherentを合わせても、市場需要を完全に満たすことはできないという。
資本関係の構築と生産能力の確保を組み合わせるNVIDIAの戦略は、光インターコネクトのサプライチェーンを自社の事業領域へ取り込む動きだ。結果として、後発企業の参入障壁を高めることになる。

中国本土の光通信産業に生じる二面性

NVIDIAによるCPOの量産は、中国本土の光通信産業に二つの側面から影響を与える。
一方では、従来型の着脱式光モジュールメーカーが、中長期的に技術路線の転換圧力にさらされる。中際旭創と新易盛の売上高は、NVIDIA、米Google(グーグル)、Microsoft(マイクロソフト)などのクラウド事業者が800Gおよび1.6T光モジュールを継続的に購入することに大きく依存している。

CPOの浸透率が上昇し続ければ、スケールアップネットワークにおける着脱式モジュールのシェアは徐々に縮小する可能性がある。中際旭創の24年海外売上高比率は86.81%、新易盛は78.70%、光迅科技は34.32%だった。このように国際市場への依存度が高い売上構造を持つため、技術路線の切り替えによる影響はより直接的になる。

中際旭創と新易盛はいずれも海外売上高比率が75%を超えており、北米顧客への依存度が非常に高い。CPOがスケールアップネットワークで着脱式モジュールに取って代われば、両社の中核的な収益源が直接的な影響を受ける可能性がある。

他方、CPOは一部の中国本土メーカーに新たな成長機会ももたらしている。NVIDIAのCPOサプライチェーンに参加する唯一の中国本土企業である天孚通信は、FAUやPOSAなどの高速光エンジン製品を通じて、CPO量産の恩恵を直接受ける立場にある。

華工正源は、次世代の3.2Tbps液冷CPO光エンジンソリューションを発表し、6.4Tへの進化にも対応している。中際旭創も、NPO、XPO、OCS、CPOという全技術ルートに対応する体制を整え、シリコンフォトニクスチップの自社開発・自社生産を実現した。
こうした取り組みは、中国本土の大手メーカーがCPOの波を受け身で待っているのではなく、積極的にポジションを確保しようとしていることを示している。

国産代替に残る高い壁

中国本土メーカーはCPO分野で一定の布石を打っているものの、核心工程における国産代替の差は依然として大きい。シリコンフォトニクスチップの分野では、高性能なシリコンフォトニクスチップと電子チップが光モジュールのコストの約半分を占める。しかし、現在の国産化率は約4%にとどまる。

シリコンフォトニクスチップでは、シリコン基板上に光導波路、変調器、検出器、結合構造を同時に形成する必要がある。製造には通常20~40層、場合によってはそれ以上の多層フォトリソグラフィー工程が必要で、技術的な参入障壁は非常に高い。

中際旭創はシリコンフォトニクスチップの自社開発・自社生産を実現しているものの、生産能力と技術成熟度は、国際的な先行企業の水準に依然として差がある。

レーザーの分野では、CPOの主流方式は外部レーザー光源(ELS)を採用する。InP(リン化インジウム)で作られたCWレーザーが外部光源を提供する仕組みだ。

LumentumとCoherentは、世界のInPレーザーの主要サプライヤーであり、NVIDIAは40億ドルの投資を通じて両社の生産能力を確保した。中国本土企業は、高出力・高信頼性のInPレーザー分野では依然として追い上げの段階にある。

源杰科技、長光華芯、仕佳光子などは、光電チップの国産化を加速させている。しかし、大規模な量産供給に至るまでには、長期の顧客認証と生産立ち上げの期間が必要となる。
先端パッケージングの分野では、CPOの2.5D/3D集積工程が、パッケージングの精度と歩留まりに極めて高い水準を要求する。TSMCのCoWoSは、5.5倍のレチクルサイズに対応し、12個のHBM4スタックを集積できるまで進化している。SPILも、ウエハーレベルおよびチップレベルのパッケージング・テストで豊富な技術を蓄積している。

中国本土の先端パッケージング能力は急速に整備されているが、CPOに必要な高精度の光ファイバー結合、共封止基板の設計、量産歩留まりの管理では、国際先行企業との間に世代単位の差がある。

中国本土の光通信産業にとって、これは従来型の着脱式光モジュールが技術路線の転換圧力にさらされることを示す警告であると同時に、国産メーカーが産業チェーンの上流へ進出する戦略的な機会でもある。

ただ課題は、中国本土企業が光モジュールの量産技術と大規模納入能力で世界的な競争力を持つ一方、シリコンフォトニクスチップ、InPレーザー、先端パッケージングといったCPOの中核工程では、国産化率が依然として一桁台にとどまっていることだ。
短期的には、中国本土メーカーは部品レベルへの参入やサブシステムソリューションを通じて、CPOサプライチェーンに入り込むことができる。中長期的には、上流の中核チップと製造工程で実質的な突破を実現する必要がある。
CPOの大規模商用化が見込まれる2027~2028年という時期は、国産代替に向けたカウントダウンであると同時に、中国本土の光通信産業が「大規模モジュール」中心から「高性能チップ」中心へ転換するための重要な勝負の場となる。

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