世界の半導体計測装置市場、中国企業が存在感

半導体計測装置は、半導体製造装置の中でも最も重要な分野のひとつで、チップの歩留まりを保証する中核的存在だ。同時に、ウエハー製造からパッケージング・テストに至るまでの全工程に関わる重要な要素でもあり、国産化の波の中で中国企業も台頭しつつある。
ナノレベルの欠陥検出から重要寸法の測定までを担うこれらの半導体計測装置は、チップ性能と信頼性を直接左右する。製造プロセスが14ナノメートル(nm)から7nm、5nm、さらには3nmへと微細化するたびに、計測装置の精度・速度・感度への要求は指数関数的に高まり、こうした「技術的圧力」が市場成長の最強エンジンとなっている。
2024年、世界の半導体産業が回復傾向を見せる中、計測装置市場も堅調な成長を続けている。調査機関によると、24年の世界市場規模は120億8000万~168億8000万ドルと推定され、QYResearchのデータでは120億8000万ドル、25~31年の年平均成長率は4.9%で、31年には168億3000万ドルに達する見込みだ。成長の主因は、先端ロジックチップ製造プロセスの高度化によるプロセス制御需要の拡大、3D NANDやHBM(高帯域幅メモリ)の生産拡大、そしてAI(人工知能)チップにおける異種集積や積層パッケージ化による検査の高度化などである。
特にAI産業の爆発的な成長を背景に、HBMチップ市場は2025年に120億ドル規模に達すると見られ、パッケージ工程での高精度検査装置需要が急増している。
また、半導体製造装置市場全体も回復しており、24年の世界出荷額は1171億ドル(前年比10%増)。前工程および後工程装置の需要がともに増加し、計測装置にとって豊富な需要が生まれている。
中国が世界最大の市場に
一方、中国本土はすでに世界最大の半導体計測装置市場となっており、17~21年の年平均成長率は31.74%に達した。ウエハー工場の増産と国産化の推進が、中国市場を世界成長の中心へと押し上げている。
市場構造を見ると、検査・計測装置市場は細分化している。VSLIResearchによれば、検査装置が市場の62.6%を占め、ウエハー欠陥検査やマスク検査などが中心。計測装置は33.5%を占め、三次元形状測定、膜厚測定、アライメント精度測定などが含まれる。
第3世代半導体分野では、炭化ケイ素(SiC)など新素材の普及により、非破壊検査への需要が急増。従来の化学腐食法の非効率性が課題となり、光学化・高速化への技術転換が進んでいる。
世界市場は寡占構造にあり、米KLAテンコールが絶対的なリーダーとして君臨。米Applied Materials(アプライド・マテリアルズ)、日立ハイテク、米Rudolph Technologies(ルドルフ・テクノロジーズ)なども強固な技術・特許・顧客基盤を持ち、世界シェアの90%以上を占める。中国市場でもこの構図は顕著で、KLAが50%以上のシェアを持つ。
中科飛測などが牽引
しかし、国産化の波の中で、中国企業も着実に台頭している。深セン中科飛測科技(広東省深セン市)は国内の先端計測分野を牽引する存在で、中芯国際集成電路製造(SMIC、上海市)や長江存儲科技(YMTC、湖北省武漢市)など主要メーカーに製品を供給。3nm以下の先端工程では課題も残るが、国産化の旗手として注目を集めている。
睿励科学什器(上海)は薄膜測定分野で強みを持ち、精測電子はディスプレイ検査装置の経験を活かし半導体分野に進出。蘇州天准科技(江蘇省蘇州市)はAIとマシンビジョン技術の融合で差別化を図っている。さらに、大連創鋭光譜(遼寧省大連市)はSiC向けの非破壊検査装置を開発し、海外輸出も実現。深セン新凱来技術(広東省深セン市)は3~5nmプロセス対応の超高速オシロスコープを発表し、国内の技術空白を埋めた。
第三者検査分野でも勝科納米(蘇州)(江蘇省蘇州市)が急成長しており、25年上半期の売上は2億3900万元(前年比29.03%増)、国内シェアは7.44%に達した。
今後、半導体計測装置市場は技術革新と国産化の二重の追い風を受けて成長が続く見通しだ。プロセスの微細化、材料革新、複雑化するパッケージ技術がさらなる高精度化を促し、AI、非破壊検査、多次元統合検査などが競争の焦点となる。
国際大手の寡占は短期的に崩れないものの、中国企業が技術・製品・サービスで着実に力をつける中、国産装置のシェアは徐々に拡大していくとみられる。分野ごとの代替から総合競争へと進み、中国独自の半導体検査装置産業チェーンが形成されつつある。



