NVIDIAのファンCEO、「中国シェアは95%から0%へ」=米輸出規制の影響で

米半導体大手のNVIDIA(エヌビディア)のJen-Hsun Huang(ジェンスン・ファン)最高経営責任者(CEO)はこのほど、米ニューヨークで行われたシタデル・セキュリティーズ(Citadel Securities)のイベントで、米国の対中輸出規制の影響で「エヌビディアの中国市場シェアは95%から0%になった」と語った。
米Citadel(シタデル)は16日、同社のパートナーであるKonstantine Buhler(コンスタンティン・ビューラー)氏(紅杉資本)との対談動画を公開。テーマは「Citadel Securities 2025年グローバル市場の展望:AIと次なる成長の最前線」だった。
ファン氏はこの中で、AI(人工知能)によって「エージェント型AI(agentic AI)」と「フィジカルAI(physical AI)」という2つの巨大市場が生まれていると説明。両市場の規模は合わせて約100兆ドル(約1京5000兆円)に達すると見込んだ。
エージェント型AIは企業のデジタル労働力を補完・強化するもので、エヌビディアの全ソフトウェアエンジニアやチップ設計者はコード生成ツール「Cursor」を利用しているという。一方のフィジカルAIは人間の労働を拡張する技術で、ロボットタクシーを「デジタル運転手」として例に挙げ、「AIはあらゆる移動体に組み込まれる時代になる」と述べた。
世界最大級の市場を失う結果に
対談では中国市場にも話が及び、ファン氏は「米国の輸出規制により、NVIDIAは中国市場から完全に撤退した」と明言。中国でのシェアは「95%から0%になった」と語り、「米国の政策が、世界最大級の市場を失う結果を招いた」と強い懸念を示した。
また、「米国はAI競争で勝ちたいと考えており、政策立案者も正しいことをしたいと思っている」としながらも、「中国を傷つける政策は、多くの場合、米国自身をも傷つける可能性がある。時にその影響はさらに大きい」と警告した。
AI規制の在り方について問われたファン氏は、「新しい技術をどう規制すべきかは慎重に考える必要がある」としたうえで、「開発者こそ未来を築く存在であり、中国には世界のAI研究者の約半数がいる。彼らが米国の技術を基盤に研究できないのは誤りだ」と主張した。
ファン氏は「技術的優位性を保ちながら、世界が米国技術を基盤に構築されるようにするには、微妙なバランスが必要だ」と述べ、「白黒をつけるのではなく、時間をかけて調整する戦略が求められる」と強調した。
さらに、エヌビディアのすべての株主予測は「中国事業ゼロ」を前提にしていると明かし、「中国で新たな展開があれば、それはボーナスのようなものだ。政策の見直しに期待している」と語った。
エヌビディアの中国事業をめぐっては、米国政府が2024年4月にGPU(画像処理半導体)「H20」の対中輸出を制限。エヌビディアは一時、輸出許可の再申請を行い、同年7月には販売再開を発表したが、その後も許可取得は難航している。
業界関係者によると、24年の中国市場におけるH20シリーズの出荷量は約60万~80万個と推定され、中国製AIチップの倍近い規模だという。
米市場調査会社Omdiaの報告では、24年のHopperシリーズ(H100、H200、H20など)の最大購入者は米Micorosoft(マイクロソフト)(約48万5000個)、続いて中国のバイトダンス、騰訊(テンセント)、米Meta(メタ)、Amazon(アマゾン)、xAI、Google(グーグル)などが挙げられている。
エヌビディアの25会計年度(24年実績)によると、中国本土と香港を合わせた売上は前年比66%増の171億ドルに達し、全体の13.1%を占めた。しかし輸出規制の影響で、この比率は3年連続で低下している。
ファン氏は、「現状を維持したいなら、むしろ投資を強化すべきだ。中国は米国に継ぐ世界で2番目に大きいテクノロジー市場であり、非常に活発だ」と述べ、中国における継続的な投資の重要性を改めて強調した。
現在もエヌビディアは中国に大規模なエンジニアチームを抱え、H20など規制対象外のチップを用いて、阿里巴巴(アリババ)の「通義」や「DeepSeek」などの国産大規模AIモデルの最適化を支援しているという。



