GPUメーカーの上場ラッシュ到来か、摩爾線程も上場準備着手
GPU(画像処理装置)の開発を手掛ける中国スタートアップの上場ラッシュが訪れそうだ。中国証券監督管理委員会(証監会)の公式サイトによると、「中国版NVIDIA(エヌビディア)」とも呼ばれているGPU開発の摩爾線程智能科技(北京)(Moore Threads、北京市)はこのほど、北京証監局にカウンセリング登録を申請し、中国A株の上場準備に正式に着手した。今年8月から9月にかけては、「燧原科技(Enflame Technology)」と「壁仞智能科技(Biren Technology)」が同様にA株上場に向けた準備プロセスに入った。
中国のGPU業界は今年、政策支援や投資マネーの流入、市場需要に支えられて、国内メーカーに大きな商機が訪れている。人工知能(AI)市場の急速な拡大や、クラウドファンディング、エッジコンピューティング、自動運転、VR(拡張現実)/AR(仮想現実)技術の普及に後押しされて、GPUの活用領域は、日常的に使用されるパソコンやゲーム機からAIやハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)の領域にまで広がった。
米市場調査会社のJon Peddie Research(JPR)の最新リポートによると、2024年の世界のGPU市場規模は985億米ドル(約15兆2512億円)を超え、中国は同市場の重要構成要素になると見込まれる。また中国では、世界貿易環境の不確実性から、国産品への切り替えがGPU産業を発展させるためのキーワードとなっている。
もっとも商機の裏に潜むリスクも存在する。グラフィックカード生産で世界2位の香港・栢能集団(PCパートナー・グループ)は、米国による対中半導体規制を回避する目的で、本社をシンガポールに移転し、生産ラインもインドネシアに移した。米中関係の悪化を受けて、米国の対中規制は今後さらに強化されるとみられる。
米中半導体摩擦は、中国GPUメーカーのサプライチェーン(供給網)にも影響している。半導体製造受託(ファウンドリー)世界大手の台湾積体電路製造(TSMC)はこのほど、GPUメーカーを含む中国の顧客に対し、7ナノメートルおよびそれ以下の先端プロセスを使用する最先端半導体の受託製造を当面停止すると伝えた。