スマホ大手の小米が提訴される、パテント・トロールの標的か

海外の知的財産専門メディア『ip fray』によると、中国スマートフォン大手の小米科技(北京市、シャオミ)が特許を侵害しているとして提訴された。原告の米国の知財信託会社サン・パテント・トラストは、セルラーネットワークの技術分野において、特許権を名目に企業などから巨額の賠償金を得ようとする「最強のパテント・トロール(特許の怪物)」として業界内でその名が知れ渡っており、オランダ誌『Smartphone Magazine』は、今回の訴訟を通じて小米に請求する損害賠償額は3億米ドル(約471億円)に達する可能性があると報じた。

米デラウェア州を拠点とするサン・パテント・トラストは現地時間5月28日、フランス、インドなど複数の国で小米を相手取って特許侵害訴訟を起こしたと発表した。小米は、サン・パテント・トラストが保有している第4世代携帯電話(4G)「LTE-Advanced」の「標準必須特許」(SEP)を無断で使用したと主張している。

小米は研究開発に年間1,000億元を超える資金を投入しており、取得した特許は3万7000件を超える。通信分野だけでも、2019年以降にエリクソン、ノキア、NTT Docomo、華為(ファーウェイ)など業界大手企業と通信技術などの標準規格を使用する上で必須となるSEPのクロスライセンス契約を締結した。

サン・パテント・トラストに提訴される直前の5月24日にも、シャープと無線通信技術に関する特許クロスライセンス契約を締結したばかりだ。

『ip fray』は「小米が獲得した絶対的多数の特許ライセンスは友好的な協議によるもので、訴訟によって勝ち取ったものではなく、小米が誠実にライセンスを受ける意思を有する実施者(willing licensee)であることは間違いない」と指摘。サン・パテント・トラストが起こした訴訟について、「“privateer(私掠船)戦術”の性質があることは明らか」と批判した。

私掠船は、国と国との過去の戦争において、私掠特許状によって,敵国の艦船を襲撃し、拿捕(だほ)する権利を認められた民間の船舶を指す。特許業界でもこれになぞらえ、事業会社から取得した特許権を経済活動に活用せず、損害賠償やライセンス料を請求するための道具として悪用する行為を「Patent Privateer(特許私掠船)」とネーミングし、議論の対象となっている。

世界的に著名なコンサルティング会社Stoutが2022年に発表したリポートによると、世界に約5万件存在する5Gの標準必須特許(SEP)のうち1100件がパテント・トロールの手に渡っている。中国では世界市場競争に参与する企業が増えつづけており、「特許私掠船」の攻撃を受ける機会は今後増えていくと予想される。

Tags: , , ,

関連記事