中国で「EV交換式電池」普及に期待、市場規模1000億元
中国で電気自動車(EV)向け交換式電池のポテンシャルがクローズアップされている。調査会社、艾瑞諮詢集団(アイリサーチ iResearch)の概算によると、中国の電池交換ステーション数は、2025年に3万カ所を超える見通し。1000億元(約2兆1535億円)規模といわれる交換式電池市場がいよいよ本格的に動き出す。
中国のEVメーカーは一般的に、2015年4月に導入された技術規格に基づき、EV電池に最大8年または12万キロの保証を提供している。15年から8年が経過した現在、8年間の保証期間を持つEVは今後、順次保証期間が切れることになり、ここにきて電池交換式EVのメリットが見直されている。
高出力の急速充電器の普及が途上にある中、EVの課題の一つである充電待ち時間の問題を解決できるとあって、中国政府は2020年以降、交換式電池の開発・実用化を支援する立場を明確にしている。工業情報化部は23年末、EVの電池交換モデルの普及を後押ししていく方針を改めて強調した。
交換式電池事業では、新興EVメーカーの上海蔚来汽車(NIO)が中国市場で先頭を走っている。
同社は今年1月、安徽省能源集団、安徽省交通控股集団と戦略的提携関係を締結し、1000カ所の電池交換STを共同で建設することに合意するとともに、奇瑞汽車、江淮汽車の完成車メーカー2社とそれぞれ交換式電池事業で提携していくことを確認した。さらにソーラーパネルメーカーの隆基緑能科技(ロンジー・グリーン・エナジー・テクノロジー)との間で、電池交換STの電池を太陽光で蓄電する事業モデルを共同で推進していくことで合意した。
2月には蓄電事業を手掛ける南網儲能の子会社と、電池回収、電池交換などの分野で協力していくことを確認。3月には中国の車載電池最大手、寧徳時代新能源科技(CATL)と長寿命電池の共同開発事業で提携した。
電池交換式EVの普及に向けた課題は、規格の統一にある。中国国内にはいくつかの企業連合が存在するが、規格は不統一のままだ。統一できれば、電池交換式EVは一足飛びに市場競争の段階に入り、大規模な事業展開が可能になる。
電池交換ST事業の確立も課題だ。電池交換STは充電STよりも建設コストが高く、現在主流の中・小型STでも200万~500万元の投資が必要という。