華為、次世代AIチップ「昇騰900」を中国市場限定で供給へ

中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ、広東省深セン市)はこのほど開催した「2026 Huawei Connect」において、次世代AIアクセラレーター「昇騰(Ascend)900」シリーズについて、主に中国市場向けに供給し、当面は海外市場へ全面展開しない方針を明らかにした。
ファーウェイの輪番制董事長を務める徐直軍氏は中国メディアの取材に対し、生産能力が限られている一方で国内需要が旺盛なため、現在のAIコンピューティング機器の生産量は中国国内の強い需要すら満たせていないと説明した。そのため、現時点で国際市場へ本格的に進出する計画はないという。
徐氏は、生産能力のボトルネックにより、ファーウェイは中国国内市場のコンピューティング需要さえ十分に満たせていないと率直に語った。この状況では、海外市場への全面進出は現実的ではないとの認識を示した。
ただし、ファーウェイが海外供給を完全に停止するわけではない。同氏によると、引き続き「需要が特に旺盛な一部の国」には少量の製品を供給する方針だが、対象となる市場や具体的な供給量については明らかにしなかった。
今回の発言により、市場で取り沙汰されていた、ファーウェイが2026年第4四半期に韓国のAIチップ市場へ参入するとの観測は、当面見送られた可能性が高い。
ファーウェイは今年初め、スペイン・バルセロナで開催された「MWC2026」で、最新の超ノード製品とソリューションを海外で初めて披露した。複数の製品モデルを含む内容だったことから、当時は同社のAIチップ海外展開に向けた前触れと受け止められていた。しかし現状では、世界市場への展開よりも、中国国内への供給を優先する方針に転じたとみられる。
昇騰のロードマップを公表
大会期間中、ファーウェイはAIアクセラレーターの最新ロードマップも公表した。現行の「昇騰910C」や「昇騰950」シリーズと比べ、次世代のNPU「昇騰960」「昇騰970」「昇騰980」は、学習および推論性能が大幅に向上する見通しだ。
このうち「昇騰950DT」は、試験が順調に進んでいるという。徐氏によれば、ファーウェイは現在、中国国内の複数の大規模モデル開発企業と協議を進めており、来年にはより多くのモデルが同システムを採用して学習を行う見込みだ。ファーウェイはこれまで、昇騰950DTを2026年第4四半期に発売すると公表している。
半導体受託生産とエネルギー効率という二つの課題に直面するなか、ファーウェイはシステムレベルでの規模拡大とクラウドサービスへの注力に軸足を移し、AIハードウエア市場での競争力を維持しようとしている。
先端製造プロセスと単体チップの性能向上を重視する米エヌビディアとは異なり、ファーウェイは超ノードや大規模クラスターを中心とするアーキテクチャーに重点を置いている。チップ間の相互接続を活用することで、システム全体の演算性能を引き上げる狙いだ。
ファーウェイは大会で、「クラスター+超ノード」のアーキテクチャー革新を通じて堅固なコンピューティング基盤を構築すると強調した。また、オープンソースと開放性を堅持し、世界に新たな選択肢を提供する方針も示した。
近く投入される「昇騰960」シリーズのニューラル・ネットワーク・プロセッサー(NPU)は、AMDやエヌビディアが現在提供する一部のAI GPUに匹敵する性能を持つとされる。ただしファーウェイは、単体チップの性能差をシステムレベルのソリューションによって補う戦略を選択している。
海外展開の具体的な時期は示さず
ファーウェイは、現在のAIコンピューティング機器の具体的な生産能力を公表しておらず、海外市場へ全面展開する時期についても明確なロードマップを示していない。当面は、昇騰事業において中国国内への製品納入と、次世代製品の量産体制の構築が優先される見通しだ。
中国産AIコンピューティングへの需要が急速に拡大し、AI大規模言語モデル(LLM)の学習・推論に対する半導体需要が急増するなか、ファーウェイの「国内販売優先」戦略は、中国製高性能AIチップが抱える需給ギャップの現実を浮き彫りにしている。半導体設計やシステムアーキテクチャーの面で、制約下にありながら技術的な進展を実現したとしても、生産能力の引き上げは依然として事業規模の拡大を阻む最大のボトルネックとなっている。




