米アップル、中国市場向け端末に長シン存儲・長江存儲のチップ採用を検討か=米報道

2日付米ブルームバーグが関係者の情報として報じたところによると、米Apple(アップル)は中国市場向けに販売する端末について、中国の2大メモリチップメーカーである長シン存儲技術(シンは金が3つ、CXMT)と長江存儲(YMTC)のメモリチップ採用を検討している。世界的なメモリチップ不足による供給・コスト面の圧力を緩和することが目的とされる。交渉は現在も継続中であり、最終合意には至っていない。
現時点でアップルはコメントを控えており、米国商務省・財務省およびホワイトハウスの報道官もこれに対する回答を示していない。
この交渉の背景には、コンシューマーエレクトロニクス業界がかつてない規模のメモリチップ供給逼迫に直面しているという現実がある。
2025年以降、世界のAI(人工知能)データセンター建設ブームが上流の生産能力を吸い上げ続けている。AIサーバーにおけるDRAM、特にHBM(高帯域幅メモリ)への需要は倍増しており、NANDフラッシュメモリも企業向けSSDの大量調達によって需要が急増している。メモリ大手の韓国サムスン・SKハイニックス・米Micron Technology(マイクロン・テクノロジー)はいずれも生産能力をデータセンターおよびAI顧客に優先的に振り向けており、これらの顧客はより高いプレミアムを支払うことができる。コンシューマーエレクトロニクス向けは後回しにされており、過去数年間のメモリ業界における設備投資の慎重な姿勢と重なって、需給のギャップは急速に拡大している。
アップルへの影響として、全製品ラインにわたる価格上昇が生じている。関係者によると、この状況に対処するため、アップルのサプライチェーンチームは「中国国産メモリソリューション」を改めて検討対象として俎上に載せた。
長シン存儲は合肥を拠点とし、DRAM(ダイナミックランダムアクセスメモリ)、すなわち端末の「実行メモリ」を主力製品としており、DDR4・DDR5・LPDDR5Xをラインナップしている。2026年下半期には15ナノメートル(nm)プロセスの量産を計画しており、12層HBMの開発にも着手している。長江存儲は武漢市を拠点とし、3D NANDフラッシュメモリ、すなわち「倉庫型」ストレージを主力としており、本体ストレージやSSDなどに使用される。国内で唯一3D NANDの完全なサプライチェーンを実現したIDMメーカーであり、独自のXtacking(エックスタッキング)アーキテクチャは232層以上へと進化している。
1台のiPhoneやMacにはDRAM(実行メモリ)とNAND(フラッシュメモリ)の両方が必要であり、前者は「動作」を、後者は「保存」を担う。交渉が成立すれば、中国で販売されるアップル端末に2社の国産メモリが同時に採用される可能性があり、サプライチェーンの分散化を図るとともに、海上輸送や関税摩擦に伴う追加コストも回避できる。
ただし、長シン存儲と長江存儲はいずれも米国商務省の「エンティティリスト」に掲載されている。理論上、アップルが中国メーカーから成熟プロセスのコンシューマー向けメモリチップを調達することは、米国の対中輸出管制において米国側の承認が必要な規制の一線を越えるものではないが、政治的な反発を招く可能性は依然として残る。
関係者によると、アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)はすでにこの件についてベッセント財務長官を含むトランプ政権の高官に働きかけており、中国のメモリメーカーをアップルのサプライチェーンに組み込むことで生じうる連鎖反応を抑えたい考えだ。トランプ政権の一部高官はすでに反対の意向を示しており、サプライチェーン問題でアップルにこの2社を取り込む「余地」を与えることに難色を示している。
実際、2019年にもアップルは「中国製造への過度な依存」を理由に米国内で圧力を受けており、23年前後にはバイデン前政権も「アップルが長江存儲のチップを使用している」との報道に対して懸念を示したことがある。現在のトランプ政権による対中産業規制はそれ以上に厳しいものとなっている。
長シン存儲は今年5月、科創板(スター市場)でのIPOプロセスを再開し、長江存儲の持株会社も湖北省の証券監督当局に指導登録を行った。国産「メモリ二強」はほぼ同時に資本市場への上場を目指している。アップルからの発注が実現すれば、たとえ中国市場限定であっても、両社の生産能力消化と市場評価にとって強力な後ろ盾となる。




