中国企業、8インチ酸化ガリウム単結晶の製造に成功

中国企業が、ストレージと計算の基盤構造を再構築する次世代メモリアーキテクチャの有力材料として期待されている酸化物半導体、とりわけ酸化ガリウムを中心とする重要材料の研究開発(R&D)と産業化で世界的な成果を相次いで達成している。
生成系AI(人工知能)が世界的な熱狂を巻き起こす中、ChatGPTに代表される大規模言語モデル(LLM)のパラメータ数はすでに数千億規模に達している。しかし、その華々しい進歩の裏側で、計算機ハードウェアの根源的な制約がますます顕在化。従来の計算アーキテクチャでは、データがプロセッサとメモリの間を頻繁に行き来する必要があり、この「データ移動」に要するエネルギー消費は、実際の計算処理そのものを大きく上回る。この構造的問題は「メモリウォール」として知られ、AI時代の深刻なボトルネックとなっている。
そこで注目されているのが、後工程配線(BEOL)との高い互換性にあり、ロジックとメモリの集積化が可能となること酸化物半導体だ。決定的な特性は、極めて低いプロセス温度にある。インジウム・ガリウム・亜鉛酸化物(IGZO)に代表される新世代材料は、400度以下という低温環境でも高性能薄膜を形成できる。この温度条件は、既存のシリコン系半導体製造における「生命線」とも言える制約に合致する。
現代の半導体製造では、下層に演算を担うシリコンCMOS(相補型金属酸化膜半導体)トランジスタ(前工程)、上層に複雑な金属配線ネットワーク(BEOL)が構築されている。従来型メモリをロジックと集積しようとすると、高温プロセスが下層の微細なシリコンデバイスを破壊してしまう。一方、酸化物半導体はBEOLとの天然の互換性を持ち、ロジックコアの直上にメモリを積層する三次元異種集積を可能にする。これこそが「メモリウォール」を物理的に突破するための現実的な道筋だ。
中国で産業エコシステムの形成も加速
中国はこの分野、とりわけ酸化ガリウムを中心とする重要材料の研究開発(R&D)と産業化分野で世界的な成果を相次いで達成している。一部のデバイス技術ではすでに国際的な水準に達し、国家および地方政府の政策支援の下で産業エコシステムの形成も加速している。
材料面では、中国科学院上海光学精密機械研究所や杭州富加ガリウム産業などが、垂直ブリッジマン法を用いて8インチ酸化ガリウム単結晶の製造に世界で初めて成功した。1年足らずで3インチから8インチへと急速にスケールアップした点は特筆に値する。この成果は主流の8インチ半導体ラインに直接適合可能であり、コスト低減と量産化を大きく前進させる産業化の節目と評価されている。
デバイス分野では、酸化ガリウムの最も明確な応用先としてパワー半導体が挙げられる。中国科学院蘇州ナノテクノロジー研究所は、垂直構造の酸化ガリウムトランジスタおよびダイオードを開発し、低リーク電流、高耐圧、比オン抵抗の世界記録を更新した。これは新エネルギー車や電力網など超高電圧・高効率用途向け国産チップ開発の基盤となる。
さらに、P型材料とCMOS集積という業界最大級の難題においても突破があった。電子科技大学の劉奥(リウ・アオ)教授チームは、非晶質材料系において高効率な正孔伝導を実現し、全酸化物CMOS回路の集積に成功した。この成果は科学誌『Nature』誌に掲載され、三次元集積、フレキシブルエレクトロニクス、インメモリコンピューティングといった次世代アーキテクチャへの道を切り開くものと評価されている。
総合的に見て、中国は酸化物半導体、とりわけ酸化ガリウムに代表される超ワイドバンドギャップ材料分野で、すでに世界の最前線に立っている。材料製造では産業化の要所を突破し、デバイス研究ではパワー半導体と新型計算アーキテクチャの両面で世界水準の成果を達成した。さらに、政策と資本の後押しにより産業エコシステムの構築も進んでいる。
これらは、国産メモリ技術にとって「弯道超車(カーブでの追い越し)」を実現する最適な技術ルートを示している。すなわち、従来の「計算+記憶」という平面的構造から脱却し、ロジック、ストレージ、センシングが深く融合した「計算立方体」の時代へと進む可能性が高まっている。



