中国で国産AIチップに勢い、新アーキテクチャで差別化も

米国がAI(人工知能)チップに対する輸出規制を強化して以降、中国国内では自立型AIチップ、とりわけ大規模演算(LLM)向けチップの発展に大きな注目が集まっている。GPU(画像処理半導体)路線と、GPU以外の新アーキテクチャ路線という大きく2方向での開発が加速している。

ここ数カ月、この2つの陣営はいずれも驚異的なスピードで進展しており、国産AIチップの本格的な爆発期が到来しつつある。

まずGPU路線では、上場ラッシュが続いている。12月11日に北京のGPU開発の摩爾線程(Moore Threads)が科創板(スターマーケット)に上場したのに続き、12月17日には上海の沐曦集成電路(METAX)が科創板に上場し、「国産GPU第二号」となった。摩爾線程は上場初日に425%を超える上昇を記録し、沐曦は一日で約693%の急騰を見せ、市場の熱狂は最高潮に達した。さらに、上海のGPU企業上海壁仞科技(BIRENTECH)も近く香港証券取引所(HKEX)で上場審査を通過する見通しで、実現すれば「香港市場初の国産GPU銘柄」となる。

国内GPU企業は創業チームの出自によって大きく四つに分類され、「中国版NVIDIA(エヌビディア)」「中国版AMD」とも呼ばれている。エヌビディア系は摩爾線程や上海天数智芯半導体が代表で、CUDA互換を切り口に市場参入し、自社アーキテクチャで発展を図る戦略を採る。AMD系には壁仞科技や沐曦が含まれ、差別化設計を重視する姿勢が特徴だ。国家隊系では、国防科技大学出身チームを母体とする長沙景嘉微電子が軍需分野からAI演算分野へと着実に拡大している。さらに、中国の画像認識大手、商湯科技(SenseTime、香港)から分社化した杭州曦望芯科智能科技(Sunrise)のような「スピンオフ系」も台頭している。

一方で、GPU開発は極めて資本集約型であり、継続的な巨額投資が不可欠だ。摩爾線程は全機能GPUという野心的路線を採るが、ここ数年は毎年数十億元規模の赤字を計上しつつも、高水準の研究開発(R&D)投資を維持している。沐曦も同様に、CUDA互換性を高める戦略の下で研究開発を加速させ、損失を抱えながらも技術蓄積を進めている。壁仞科技はChiplet技術の商用化をいち早く実現し、特許数でも国内トップクラスを誇る。

ただGPUの道は険しく、CUDAの壁だけでなく、HBM(高帯域幅メモリー)、Chiplet、スケールアウト型システム、エコシステム構築といった複雑な課題が立ちはだかる。それでも国産GPU企業は「まず互換、次に追い越す」という現実的な解法を選びつつある。

GPU以外のAIチップ路線

一方、GPU以外のAIチップ路線も勢いを増している。華為技術(ファーウェイ)はAIチップ分野で圧倒的存在感を放ち、このほど「昇騰(Ascend)」シリーズの3年間ロードマップを公表した。26年から28年にかけて複数世代の昇騰チップを段階的に投入し、演算性能はFP8で1ペタフロップス級に達する見込みだ。「昇騰910」を基盤とした超大規模ノード構成もすでに実用化されている。

北京の清微智能は、可重構計算(CGRA)という新アーキテクチャで急成長する新星だ。20億元(約440億円)超の資金調達を完了し、IPO準備を進めている。同社の可重構チップは、GPUの汎用性とASIC(特定用途向け集積回路)の高効率を融合し、コストを半減、エネルギー効率を約3倍に引き上げるとされる。

百度(バイドゥ)系の昆崙芯(北京)も株式改革と上場準備を加速させており、26年以降に新世代AIチップを投入予定だ。燧原科技(上海市)は訓練・推論一体型の高性能アクセラレータを発表し、科創板上場に向けた動きを継続している。

さらに、米Google(グーグル)が開発した機械学習に特化したプロセッサ「TPU(Tensor Processing Unit)」路線では北京中科昊芯英が国内唯一の量産TPUメーカーとして存在感を示す。自社開発のTPUチップは、海外GPUと比べても高い性能と電力効率を実現し、単位算力コストの大幅な低減を実証している。

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