アリババの「謎のチップ」はNVIDIA対抗か
「含光800」の次世代製品の可能性

中国IT大手、阿里巴巴集団(アリババ・グループ)傘下で、半導体設計を手掛ける平頭哥半導体(T-Head)の最新AI(人工知能)チップとされる「平頭哥PPU」について、同社のAI推論チップ「含光800」の後継で、2023年に半導体受託生産(ファウンドリー)世界大手の台湾積体電路製造(TSMC、台積電)で試作され、24年に量産に入った新世代製品との見方が広まっている。
中国中央電視台(CCTV)が今月16日夜、ニュース番組「新聞聯播」で、中国通信キャリア大手の中国聯合網絡通信(チャイナ・ユニコム)が青海省西寧市で建設を進めているコンピューティングセンター「三江源緑電智算中心」の建設状況を報じた際、背景映像に「国産AIカードとNVIDIA(エヌビディア)カードの主要パラメータ比較表」が映り込んだ。
比較表には、平頭哥PPU、華為技術(ファーウェイ)の「昇騰910B」、沐曦集成電路(METAX)の「BR104P」など国産AIチップと、NVIDIAの「A800」や「H20」が比較して記載されていた。その中で平頭哥PPUは「96GB HBM2eメモリ、700GB/sのチップ間帯域幅、400Wの消費電力」といった仕様を示し、H20に近い性能表示が注目された。従来知られていた「含光800」とは異なる“謎の新チップ”であるとの見方が広がったのだ。
中国メディアの時代週報などによると、一部業界関係者は、このPPUを「含光800の後継」と分析する。「7nmプロセス、PCIe5.0対応、400W級」の電力設計などから、23年にTSMCで試作され、24年に量産に入った新世代製品とされている。公開情報だけでは実際の演算性能や互換性、エコシステムの成熟度は不明だが、コスト面ではH20より最大40%安価とされ、大規模配備に適し、アリババ傘下でクラウドサービス事業を手掛ける阿里雲智能(アリババクラウド、Alibaba Cloud Intelligence)の推論サービス価格を半減させる可能性があるとされている。
また、コンピューティングセンター「三江源緑電智算中心」の建設にはアリババが参画。契約した1万6000枚超のPPUカードにより約2000P(ペタフロップス)規模の演算能力を供給する。中国AIチップの実用化が加速する象徴的事例といえそうだ。
アリババはこれまでサーバーCPU「倚天710」、AI推論チップ「含光800」、オープンソースアーキテクチャ「RISC-V」ベース系の「玄鉄」シリーズなど自社開発を進め、クラウドからIoT(モノのインターネット)まで幅広い製品群を揃えてきた。さらに人材獲得でも攻勢を強め、今年のAI関連新規求人給与水準ではマイクロソフトに次ぐ国内2位を記録している。
中国の証券各社は、「半導体チップ+大規模言語モデル(LLM)+クラウドコンピューティング」の自前体制を持つ唯一の中国企業として、アリクラウドの競争力は大幅に高まると評価。AI需要拡大とともに、アリババの収益モデル再評価が進む可能性を指摘している。



