中国で急速に進む固体電池開発、各社が生産ライン

中国で全固体電池の開発が急速に進んでいる。中国大手リチウムイオン電池メーカーの恵州億緯リ能(リ=金へんに里、EVE Energy、広東省恵州市)が3日、四川省成都市で全固体電池の生産ライン「龍泉2号」の稼働を発表したほか、同業の国軒高科(Gotion High-tech、安徽省合肥市)も同日、同社初の全固体電池パイロットラインが稼働し、良品率90%を達成したと明らかにした。

固体電池は、液体含有量により半固体、準固体、全固体に分けられる。特に全固体電池は電気自動車(EV)の航続距離1000キロメートル(km)超を可能にし、発火・爆発リスクを根本から解消する。中国政府は2020年、全固体電池の開発を国家戦略に位置付け、27年に小規模な搭載、30年までに本格量産に入るとの目標を示している。今年3月には国家レベルで標準システムの構築が打ち出され、中国自動車工業学会は9月に固体電池関連15件の標準審査・立ち上げ会議を開催予定だ。安全評価や材料測定方法の標準化が進めば、産業化の基盤が整う。

国内の複数の企業が固体電池の量産計画を明らかにしている。孚能科技(カン州)(カン=へんが章でつくりが夂の下に貢、江蘇省贛州市)もこのほど、年末までに硫化物系全固体電池の試験ラインを完成させ、顧客に60Ah級第1世代製品を供給すると表明している。国軒高科も2ギガワット時(GWh)規模の量産ライン設計を着手。中国自動車メーカー、奇瑞汽車(Chery、安徽省蕪湖市)は中国科学院や電池大手の寧徳時代(CATL)と共同で「固体電池連合実験室」を設立し、正極材や電解質、セパレーター分野で技術開発を進めている。

障害はコストの高さ

最大の障害はコストの高さだ。推計によると、26年時点で固体電池のコストは5700元(約11万8332円)/kWhに達し、100kWhを搭載する電気自動車(EV)では電池だけで約60万元に上る。リチウムイオン電池メーカーの欣旺達電子(Sunwoda、広東省深セン市)は26年に全固体電池を量産し、2000元/kWh以下に抑えると公言しているが、それでも100kWhで20万元、車両価格は40万元超になる計算だ。

コスト高の要因は新材料の研究開発(R&D)費に加え、液体系電池と大きく異なる製造プロセスにある。乾式電極や固体電解質の複合化、等静圧成形などの工程がコストを押し上げる。

今年に入り関連の製造装置向け需要も急増している。中国企業の無錫先導智能装備股フン(江蘇省無錫市)は今年上半期の新規受注が前年同期比7割増の124億元で、深セン市海目星激光(広東省深セン市)も117.5%増の44億2100万元を記録した。

硫化物系固体電解質が有力

材料面では硫化物系固体電解質が有力とされる。特に硫化リチウムは市場が大きく、多くの企業が布陣を強化している。固相法、液相法、気相法の3手法が主流で、今後需要拡大に伴い先行企業が恩恵を受ける見通しだ。

用途面では、まず電動垂直離着陸機(eVTOL)やヒューマノイドロボットなど高付加価値分野に投入され、その後高級EV、最終的には大衆市場に広がると予想される。億緯リ能が稼働させた全固体電池の生産ライン「龍泉2号」も当初はヒューマノイドロボットや低空飛行機向けに開発・生産する。

中金公司(CICC)は、30年に世界の固体電池出荷量は808GWhに達し、このうち全固体電池は150GWh超を占めると予測している。

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