電子部品価格が上昇、需要回復と在庫不足で

2年以上にわたり低迷していた中国の電子部品価格が今年5月以降、産業用、車載用ともに上昇に転じている。背景には、需要の回復と記録的な低在庫という2つの要因が存在しており、世界的な産業構造の変化を反映している。
産業分野では、世界経済の回復を背景に製造業の設備投資が活発化し、各種電子部品の需要が前年比で20%以上増加した。自動車分野では、特に新エネルギー車の販売が急増しており、今年上半期の中国での同販売台数は前年同期比40%増加した。その結果、バッテリー管理システム(BMS)や自動運転関連の高スペックな半導体需要を強力に牽引した。
さらに過去2年間の景気後退期に、企業がリスク回避のために在庫を大幅に削減した結果、多くの部品在庫は安全水準を大きく下回り、急な需要回復に供給が追いつかない状況にある。特に新エネルギー車の中核部品である高圧IGBTは、需要が3年ぶりに回復し、価格は15~20%上昇した。
半導体大手のexas instruments(テキサス・インスツルメンツ、TI)は、今年第2四半期決算で「産業需要は底を打ち反発している」とし、顧客の在庫が歴史的な低水準にあると説明した。中国の半導体メーカーの華虹半導体も、需要回復を受け、今年第2四半期から製品価格を10~15%引き上げる計画を明らかにした。
電子部品不足を招いた背景には、産業構造の変化がある。産業機器の高度化や自動車の「電動化・スマート化」に伴い、炭化ケイ素(SiC)パワー半導体や高性能センサーなど、製造難易度の高い一部の部品は旺盛な需要があるが、生産能力が限られるため、構造的な品不足と価格上昇を招いた。
また、地政学リスクを背景とした企業の「ニアショアリング(生産地の近隣移転)」や「フレンドショアリング(同盟国への移転)」の動きも、物流コストの増加や非効率化を招き、部品全体のコストを押し上げている。



