サムスン、テスラと2.3兆円規模の半導体受託製造契約を締結

韓国のサムスン電子は28日、あるグローバル企業との間で2033年末まで有効となる総額約22兆8000億ウォン(約2兆2800億円)の大規模な半導体受託製造(ファウンドリー)契約を締結したと発表した。このグローバル企業は米Tesla(テスラ)とみられている。

サムスン電子は28日、あるグローバル企業との間で、33年末まで有効となる総額22兆8000億ウォン規模のファウンドリー契約を結んだと発表。これは同社の24年売上高の約7.6%に相当するという。事情に詳しい関係者によれば、この契約先はテスラであるとされている。

(イーロン・マスク氏のXより)

テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)もSNS上でこの契約の存在を認め、「サムスンがテスラの生産効率最大化を支援することに同意した」と明らかにした。また「これは非常に重要な取り組みであり、私自身が直接関与する」と強調した。

マスク氏によると、サムスンは米テキサス州に新設中の工場で、テスラの次世代の車載コンピューター「AI6」の生産を担う予定であり、現時点ではAI4を製造中という。一方、導体受託生産(ファウンドリー)世界大手の台湾積体電路製造(TSMC、台積電)は台湾でAI5を製造した後、米アリゾナ州に生産を移す計画だとされる。

この発表を受け、28日13時14分時点でサムスンの株価はソウル市場で5.54%急騰し、約4週間ぶりの大幅な上昇を記録した。今回の契約はサムスンが半導体のファウンドリー市場でシェアを失いつつある状況下での受注であり、業界ではその意義が注目されている。

サムスンは自社でメモリチップの設計・製造を行うほか、他社向けのファウンドリー事業も展開しているが、TSMCやSKハイニックスなどの競合に押され、苦戦が続いている。調査会社TrendForceのデータによると、25年第1四半期(1〜3月)の世界ファウンドリー市場におけるTSMCのシェアは67.6%に達した一方、サムスンは前四半期の8.1%から7.7%へと縮小した。

業界関係者は、サムスンが顧客獲得に苦戦していると指摘。米Apple(アップル)やNVIDIA(エヌビディア)など主要顧客がTSMCにシフトしており、先端製造技術での遅れが明らかになっている。これがファウンドリー市場におけるサムスンのシェア縮小に直結しているという。

こうした中、22日付韓国メディアによると、サムスンは「選択と集中」戦略を打ち出し、2ナノメートル(nm)プロセスの歩留まり向上にリソースを集中させていると報道。今回の受託契約は、サムスンの次世代技術に対する市場の信頼の表れとの見方もあるが、一部では今回の契約に2nm技術は含まれない可能性が高いとも指摘されている。

マスク氏が言及したテキサス州テイラー市にあるサムスンの新工場は、建設が難航しており「波乱のプロジェクト」とされている。22年に着工されたものの、当初23年4月の完成予定が24年10月に延期され、さらに27年2月まで遅れるとの見方も浮上している。

サムスンは顧客確保に苦戦しており、テイラー工場への設備導入を見送っていると報道されている。ある関係者は「サムスンが当初計画した製造ノードはすでに顧客ニーズに合わなくなっており、全面的な設備更新には莫大なコストがかかる」と述べ、現時点では様子見の姿勢だと説明した。

サムスンは当初、4nmプロセスでのチップ製造を予定していたが、後に顧客要望に応じてより先進的な2nmプロセスの導入を検討しているという。

米国では半導体製造の国内回帰を図る動きが加速しており、トランプ氏が大統領に復帰して以降、関税措置を背景に企業の米国投資を促している。サムスンの他、アップル、エヌビディア、TSMCなども米国での新工場建設を進めている。

アップルは2024年2月、今後4年間で米国に5000億ドルを投資すると発表し、テキサス州にAIサーバー工場を建設する計画を明らかにした。TSMCは3月、これまでの650億米ドル投資に加え、1000億米ドルの追加投資を表明。3つの新工場、2つの先端封装施設、そして主要な研究開発センターの建設を予定しており、3番目の工場はすでに着工している。

エヌビディアも、TSMCや鴻海(Foxconn)、緯創資通、Amkor、SPILなどと連携し、今後4年間で5000億米ドル相当のAIインフラを米国内で構築するとしている。

サムスンとテスラの今回の大口契約は、サムスンがテイラー工場の開発を進める上で追い風となる可能性があるが、これが業績回復の決定打となるかは今後の展開次第といえる。

サムスン電子が今月初めに発表した25年第2四半期(4〜6月)の暫定決算によれば、売上高は74兆ウォンと前年同期比で0.09%の微減、前期比では6.49%増加したものの、営業利益は4兆6000億ウォンで前年同期比55.94%減、前期比31.24%減と大幅な減益に見舞われた。営業利益が5兆ウォンを下回るのは23年第4四半期以来で、市場予想(6兆6900億ウォン)を23.4%下回る厳しい結果となった。

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