EV需要でSiC市場拡大、世界半導体大手が中国に照準
中国の電気自動車(EV)市場が拡大するなか、世界の半導体大手がEV向けSiC(炭化ケイ素)パワー半導体の需要拡大を見据えて、中国企業と提携関係を構築する動きが加速している。
スイスの半導体大手STマイクロエレクトロニクス(ST)と、福建省アモイ市に本社を置く半導体企業の三安光電はこのほど、重慶市でSiC半導体の量産に向けた合弁工場を設立することで合意したと発表した。合計32億米ドル(約4,581億円)を投資する。2025年に生産を開始し、28年のフル稼働を目標としており、フル稼働後は1週間当たり1万枚の8インチSiCウエハーを生産する。三安光電は同合弁工場向けに、8インチSiC基板の製造工場を新設する。
一方、独インフィニオン・テクノロジーズは5月初め、山東天岳先進科技(SICC)と北京天科合達半導体(タンケブルー)の中国企業2社と、SiCパワー半導体材料の長期調達契約を締結した。競争力の高い6インチSiCウエハーと、ウエハーを切り出す前のSiC単結晶を確保することが目的で、同2社からの長期的な調達比率は2ケタに達する見通しだ。
高い耐熱性や耐圧性を備えるSiCは、EVの充電効率を高めるとともに、航続距離を延ばすことができるとして、EV向けの需要が急速に拡大している。ST、インフィニオンともに、中国企業との提携を通じてSiCパワーデバイスの生産ピッチを上げ、市場の主導権を握りたい考えだ。
自動車専門サイトの盖世汽車によると、米半導体大手ウルフスピードは、EV、発電・電源デバイスなどの需要拡大を背景に、2026年の世界のSiCデバイス市場は89億米ドルに達し、そのうち、EV、製造業、エネルギー分野向けのSiCパワーデバイスの市場だけで60億米ドルを占めるとの予測を示している。