AIスマートグラス向け1200万画素CIS市場、ソニー主導から中国勢が台頭

AI(人工知能)スマートグラスの普及で、日本のソニーや韓国サムスン電子などが主導してきた1200万画素のCIS(CMOSイメージセンサー)市場で近年、中国勢の台頭が顕著となっている。
技術的ハードルの突破が進む中、AIスマートグラスは単なる機能デバイスから高度なスマート端末へと進化している。中でもカメラは、もはや記録用ツールではなく、AIが世界を認識しマルチモーダルなインタラクションを実現する「目」として中核的な役割を担う存在となった。
現在主流の構成である2~4個のトラッキングカメラ+1つのメインカメラにおいて、1200万画素のCIS(CMOSイメージセンサー、相補型金属酸化膜半導体)は、解像度・サイズ・消費電力・コストのバランスに優れ、主流スペックとして市場の9割以上を占めている。
ソニーが圧倒的存在感
まず市場構造を見ると、2025年は「AIスマートグラス元年」とされ、出荷台数は急拡大した。市場調査によれば、2025年の世界出荷は約870万台(前年比+322%)、26年には1500万台超が見込まれている。中国市場も同様に成長が著しく、今後も拡大が続くと予測される。
こうした中、CIS市場ではソニーが圧倒的な存在感を維持している。同社の「IMX681」は事実上の業界標準となっており、米Meta(メタ)の「Ray-Ban Meta」や各種スマートグラス製品に広く採用されている。26年時点でも約40%のシェアで首位を維持すると見られている。
これに続くのが韓国サムスン電子で、約27%のシェアが予測される。ただし同社はマシンビジョン用途に強みを持つ一方、自社スマートグラスではソニー製センサーを採用するケースもあり、主戦場は限定的だ。
勢いを増す中国勢
一方、中国勢の台頭も顕著だ。イメージセンサー・半導体製品メーカーの豪威集成電路(集団)(OmniVision、浙江省嘉興市)は約20%のシェア獲得が見込まれ、米Meta(メタ)向け次世代製品とされる「OV12B」の存在が注目されている。
さらにCMOSイメージセンサーチップ開発の格科微電子(上海)(GalaxyCore、上海市)や思特威(上海)電子科技(SmartSens、上海市)もそれぞれ7%、3%と小規模ながら、低消費電力・小型化・コスト競争力を武器に急速に存在感を高めている。
技術戦略の違い
製品レベルでは各社の技術戦略の違いが鮮明だ。ソニーのIMX681は、裏面照射積層構造とグローバルシャッターを採用し、高フレームレートと高精度なSLAMや視線追跡を両立する点が強みとなっている。
これに対し、豪威のOV12BはオンチップNPU(ニューラル処理ユニット)とメモリを統合し、センサー内でAI処理を行う設計が特徴だ。22ナノメートル(nm)プロセスと積層構造により、リアルタイム性・低消費電力・プライバシー対応といった課題に対応し、CISを「認識デバイス」へ進化させている。
格科微の「GC12C1」は、小型化とHDR性能に強みを持つ。独自のDAG HDR技術により単フレームで高ダイナミックレンジを実現し、消費電力を抑えつつ動画品質を向上させている。また常時稼働(AON)機能により低消費電力で環境認識を継続できる点も特徴だ。
思特威はさらに低消費電力と小型化を追求しており、「SC1220IOT」ではAONモード時の消費電力を1mWまで低減。加えて高ダイナミックレンジと低ノイズ性能により、あらゆる照明環境で安定した撮影を実現する。
これらの動向から、AIスマートグラス向けCISに求められる要件は大きく3つに集約される。第一に極限までの低消費電力、第二に徹底した小型化、第三にセンシングとAI処理の融合である。特にHDRやグローバルシャッター、AON機能は今後の標準仕様になると見られる。
今後、AIモデルのエッジ化が進めば、CISは単なる撮像素子から、認識・計算・通信を統合した「知能ノード」へと進化していく。そのとき、この1200万画素センサー市場の主導権争いは、AI時代の重要な競争軸の一つとなるとみられる。




