長江存儲、第3期工場が加速 量産開始目標を1年前倒しへ

世界的にメモリー半導体の供給逼迫が続く中、中国最大のNANDフラッシュメーカー、長江存儲科技(YMTC、湖北省武漢市)が武漢で建設を進めている第3期プロジェクト(第3ウエハー工場)の工事が、驚異的なスピードで進展している。従来は2027年とされていた量産開始時期が、26年後半へ前倒しされる可能性が高まっているという。

長江存儲の第3期プロジェクトは、25年9月に正式着工した。事業主体となる長存三期(武漢)集成電路は同年9月5日に設立され、登録資本金は207億2000万元(約4610億2000万円)に上る。株主構成を見ると、長江存儲が50.19%、湖北長晟三期投資発展が49.81%を出資している。後者は湖北省の国有資本系企業であり、この背景が新会社に強固な資金力と政策面での後押しを与えている。

通常は半導体工場の建設から本格量産までには数年を要し、量産可能となるのは27年以降と見られていた。しかし、関係者によれば、長江存儲はすでにNANDフラッシュ製造装置の大量発注や工場立ち上げに向けた準備を集中的に進めており、計画が大きく前倒しされていることがうかがえる。

情報筋の分析では、着工から量産開始までわずか1年余りというのは業界でも極めて異例だという。これは、工場の主体建屋が完全に完成する前から一部の装置を搬入し、生産ラインの初期調整や試運転を並行して進める、いわば「ショートカット型」の戦略を採っていることを意味する。

1月29日付の長江日報も、「長江存儲第3期プロジェクトの建設現場では機械音が鳴り響き、林立するクレーンの間で作業員が巨大なクリーンルーム設備の設置を進めている。これは武漢の集積回路産業における3つ目の“千億元級”プロジェクトで、今年中の完成・稼働を予定し、上下流200社の集積を促す」とプロジェクト責任者の話を伝えた。昨年9月に着工したばかりにもかかわらず、すでにクリーンルーム設備の設置段階に入っていることから、その進捗の速さが際立っている。

背景にNANDフラッシュ需要拡大

こうした超高速の増産体制構築の背景には、NANDフラッシュ市場が迎えるとされる「スーパーサイクル」に向け、世界市場での競争力を一段と高めようとする長江存儲の戦略がある。供給企業が比較的限られるDRAM市場と異なり、NANDフラッシュ市場には韓国サムスン電子、SKハイニックス、米マイクロンに加え、日本のキオクシア、米サンディスク、そして長江存儲など多くの競合が存在する。

現在はAI(人口知能)ブームを追い風にNANDフラッシュ需要が急拡大し、供給不足の状態にあるものの、供給企業が多いだけに、この状況がどこまで続くかは不透明だ。特に、多くのNANDフラッシュメーカーの新規生産能力が27~28年に集中して立ち上がると、価格競争が激化するリスクもある。その中で、長江存儲の第3期プロジェクトが26年後半に量産を開始できれば、大きな先行者利益を得ることになる。

一方、サムスン電子、SKハイニックス、マイクロンといった大手各社は、収益性向上を狙い、生産能力をAI向けHBM(高帯域幅メモリー)やサーバー向け高付加価値DRAMに重点配分している。これにより、スマートフォンやPCなど民生向け製品の供給が相対的に後回しとなり、長江存儲が増強した生産能力でこうした市場の需要を取り込む余地が広がっている。

市場調査会社カウンターポイント・リサーチによると、NANDフラッシュの出荷量ベースで見た長江存儲の世界シェアは、2025年第1四半期に初めて10%を突破し、第3四半期には13%に達した。前年同期比で4ポイントの大幅増で、第3期プロジェクトが今年後半に量産を開始すれば、さらなるシェア拡大が見込まれる。

サムスンに並ぶ技術水準

なお、25年11月には湖北日報が、長江存儲が第3期プロジェクトの建設を加速していると報じている。湖北省委書記で省人民代表大会常務委員会主任の王忠林氏も現地調査の場で、「勢いに乗って機会をつかみ、規模と能力を拡大し、製品ラインアップをさらに充実させ、国内外市場を積極的に開拓し、市場シェアを継続的に高めるべきだ」と強調していた。

強調すべき点として、長江存儲の出荷量や業績、市場シェアの急成長は、単なる生産能力拡張や価格競争によるものではない。技術面でのブレークスルーと高い製品品質こそが成長の原動力となっている。

関係者によれば、長江存儲は自社開発のXtrackingアーキテクチャを継続的に進化させ、3D NANDの記憶密度や転送速度において、サムスン電子やSKハイニックスと肩を並べる水準に到達している。さらに、生産歩留まりや品質面でも高い評価を得ており、世界のトップ企業と競合できる実力を備えたとみられている。傘下ブランドの「致態」は、京東網(JD.com)のSSDカテゴリーにおいて、ダブルイレブン商戦で2年連続、取引総額と販売台数の両面で首位を獲得した。

特許面でも、長江存儲は1万1000件を超える特許を保有し、その大半が発明特許だ。これが、同社が世界各国でマイクロンに対し特許侵害訴訟を起こす自信の源となっている。さらに、サムスン電子が400層以上のCBA(CMOSボンディングアレイ)構造3D NAND製造に必要なハイブリッドボンディング特許を、長江存儲から取得したとの情報もある。

今回の積極的な増産は、長江存儲が米商務省のエンティティ・リストに追加され、米国系の装置や部材、材料の供給が厳しく制限される中で進められている点も注目される。これは、同社が「脱米国化」を進めた生産ラインを構築することで制約を乗り越え、拡張を実現していることを示している。

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