2026年はメモリーチップ不足が深刻に、米デル・HPなどが警告

AIインフラ需要急増で供給逼迫

米Dell(デル)、HP(ヒューレットパッカード)、中国小米(シャオミ)をはじめとする複数のテクノロジー企業が、AI(人工知能)インフラ構築を背景にメモリチップの需要が急増しており、2026年に深刻な供給不足が発生する可能性が高いと警告している。メモリモジュール価格が50%上昇すると予測されている。

スマートフォンなどの消費者向け電子機器を手がける小米(シャオミ)はすでに価格上昇の懸念を示し、聯想(レノボ)はコスト増に備えてメモリチップの在庫積み増しに着手した。市場調査会社Counterpoint Researchは、来年4〜6月期までにメモリモジュール価格が50%上昇すると予測している。メモリ不足は、スマホから医療機器、自動車に至るまで、現代のあらゆる電子製品の生産コストを押し上げる恐れがある。

今回の供給逼迫はAI需要による“間接的な副作用”だ。メモリチップは、AI処理を補助するタイプ(HBMなど)と、一般的なデータ保存用(DRAMやNAND)に大別される。各社はより高性能で利益率の高いAI向け製品を優先しており、そのしわ寄せで従来型メモリの供給が不足している。

デルのJeff Clarke(ジェフ・クラーク)最高執行責任者(COO)は25日のアナリスト向け説明会で、「これほど急速なコスト上昇は経験がない」と述べ、DRAM、HDD、NAND型フラッシュメモリのいずれも供給が逼迫し、価格も上昇していると指摘した。同社は製品構成の調整を検討するが、最終的には消費者に影響が及ぶ可能性が高いとみる。米国の対中制裁も供給問題を悪化させている。

HPのEnrique Lores(エンリケ・ロレス)最高経営責任者(CEO)は、26年後半に「重大な課題」に直面すると述べ、必要に応じて価格引き上げを行う方針を示した。ロレス氏によると、一般的なPCの製造コストに占めるメモリーの割合は15〜18%に及ぶ。

AIインフラ投資の急増

AIインフラ投資の急増は、データセンター周辺地域の電力料金を押し上げているだけでなく、韓国サムスン電子、SKハイニックス、米Micron Technology(マイクロン・テクノロジー)などの大手メモリメーカーの株価を大幅に押し上げている。SKハイニックスは「来年のメモリー注文はすでに完売」と述べ、マイクロも供給逼迫は26年末まで続くとの見方を示した。NANDに特化したキオクシアの株価も、昨年12月の上場後大きく上昇している。

ロジック半導体メーカーにも影響

データ処理に不可欠なロジック半導体メーカー(AIシステム構築に重要)にも影響が及ぶ可能性があり、メモリー不足が続けば顧客企業が発注を絞るためだ。

中国の半導体製造大手・中芯国際(SMIC)は、メーカーが最大手AIチップ企業である米NVIDIA(エヌビディア)向け供給を優先していることがメモリ不足の原因だと説明。こうした状況は26年に自動車や電子製品の生産を制約する可能性があると警告した。

中国では、小米がフラッグシップ製品の価格を引き上げ、来年もメモリ不足でモバイル端末の価格上昇が続くと予測。レノボは供給網の強みを生かし、ライバルが苦しむ中で市場シェア拡大の好機と見ているが、同社の温寧財務責任者も「前例のないコスト急騰」と状況を説明している。

米Apple(アップル)は比較的楽観的だが、同社幹部もメモリ価格が「やや上昇」し、新製品のコスト構造が「わずかに高くなった」ことを認めた。サプライチェーン上での強大な交渉力によって、安定供給を確保しているとみられる。

レノボは通常より約50%多いメモリー在庫を抱えており、台湾・華碩(ASUS)も在庫積み増しを加速。両社は年末商戦までは価格を据え置き、年明けに市場状況を再評価する計画だ。

SKグループの崔泰源会長も今月、「供給がボトルネックとなる時代に突入した」と警告。「世界中の企業からメモリー供給の依頼が殺到しており、どうやって全ての需要に応えるか慎重に検討している」と述べた。

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