TSMC、高雄に1.4nm工場の新設を検討 総投資額は500億米ドル超に

半導体受託生産(ファウンドリー)世界大手の台湾積体電路製造(TSMC、台積電)は次世代プロセスへの布陣を加速する。高雄を2ナノメートル(nm)生産の中核拠点として位置づけ、現在建設中のFab22(フェーズ1〜5)全てで2nm系列の生産を行う計画だ。2026年には「A16」プロセス(背面電源構造=BSPDN採用)を導入予定で、さらに第6工場区(P6)を追加し、1.4nm世代「A14」プロセスを生産する案を評価中という。総投資額は500億ドル(約7兆6000億円)を超える見通しで、TSMCの次世代ノード戦略が本格化している。
高雄のTSMC園区は旧・中油製油所跡地に建設されており、約170ヘクタールの広大な敷地を誇る。南台湾最大の半導体投資プロジェクトで、P1工場は年内に2nm量産を開始予定。P2工場も8月に設備搬入を完了し、近く量産に移行する。P3工場は23年10月に高雄市政府の建設許可を取得、P4・P5工場も24年7月に着工許可を得ており、5つの先端工場がすべて稼働フェーズに入った。
業界推計によると、1つの先端プロセス工場にはおよそ100億米ドルの投資が必要であり、高雄への累計投資額は1兆5000億台湾元(約7兆円)を超える見通し。Fab22は7,000人規模のハイテク雇用と2万人の建設関連雇用を生み出し、南台湾の半導体産業クラスターに強力な成長エネルギーをもたらすと期待されている。
現在、P1とP2は南部科学工業区に組み込まれ「楠梓科学園区」の一部となっている。両工場の直接雇用は2,000〜3,000人規模、建設・下請けを含めると総雇用は1万人を突破。地域経済の活性化や生活インフラの高度化を牽引している。
TSMCは高雄を2nmファミリーの主力拠点と位置づけ、A16プロセスを含む生産体制を構築中だ。A16は性能と電力効率の向上に加え、初めて背面電源構造(BSPDN)を採用。AIおよび高速演算チップにおける性能革新の鍵となる技術である。これにより、TSMCの地域別先端プロセス分業体制が一段と明確化してきた。
一方、A14プロセス(1.4nm)は28年量産を目標に、新竹・宝山のFab20(P3・P4)で先行導入される計画。主力生産拠点は台中のFab25で、計4棟が今年末に着工し、28年下半期に稼働予定とされる。高雄に第6工場(P6)が追加されれば、A14世代の生産能力がさらに拡充され、AIおよび高性能計算(HPC)需要の高まりに柔軟に対応できる体制となる。
米国アリゾナ州の工場でも、P3・P4ラインで2nmおよびA16プロセスの導入を予定しているものの、現地工事はまだ初期段階。28年までに量産へこぎつけるのは難しいとの見方が強い。これに対し、高雄は建設・設備導入ともに大きく先行しており、今後はTSMCの2nm以下プロセスにおける世界的中枢拠点となる可能性が高い。
TSMCの2nm P1工場は今年下半期に量産を開始予定。P2工場も年内に設備テストに入り、P3は24年10月着工済みで外観構造が完成、P4も近日着工した。P1〜P5がすべて稼働する27年第4四半期には、世界最先端の2nmクラスターが完成する見込みで、進捗は当初想定を上回るスピードで進んでいる。
2nm技術はAI(人工知能)、高速演算、車載電子、スマート製造、通信機器など広範な分野で活用が進むとみられ、高雄を中心に関連サプライチェーンの集積と地域産業の高度化を促す。TSMCは今後も高雄での拠点拡張を進め、南部半導体産業の競争力強化とともに、同市を台湾半導体戦略の中核都市へと押し上げる計画だ。
高雄市政府も「楠梓園区の開発を加速し、稼働初期だけでも少なくとも1,500人の雇用と1,500億台湾元の年間産出を見込む。市としてもTSMCの最良のパートナーとして投資環境を整備し、南台湾を世界的な半導体クラスターへと発展させる」と述べている。



