米国とEU、貿易協定の枠組みに合意 自動車関税は条件付きで15%へ引き下げ

米ホワイトハウスは現地時間21日に声明を発表し、米国と欧州連合(EU)が貿易協定の枠組みに合意したと発表した。協定は自動車、農産物、航空機、半導体、エネルギーなど19分野をカバーする包括的な内容となっている。

トランプ米大統領は7月末、協定の一部内容を事前に明かし、米国がEUからの輸入品に一律15%の関税を課すこと、EUが米国に6000億米ドル(約89兆2200億円)規模の投資を行うこと、さらに7500億米ドル相当の米国産エネルギーを購入する計画を示していた。

今回の声明では、医薬品や半導体、木材などEUからの大部分の輸入品に関税上限15%を適用することが再確認された。ただし自動車・自動車部品に関しては、EUが米国製品に対する関税減免を義務付ける法律を正式に決定した場合に限り、米国が関税を15%に引き下げる。

ホワイトハウス関係者は「EUが関連の法案を提出すれば、成立を待たずに関税を引き下げる」と強調している。EUのシェフチョビッチ欧州委員(貿易・経済安全保障担当)は、今月中に立法作業を開始する方針を示した。

自動車関税は特にドイツをはじめとするEU加盟国にとって最大の関心事だ。米国はドイツ車にとっての最大の輸出市場であり、トランプ大統領はかつてEU車に対し30%の関税を課すと警告していた。現在の関税率は27.5%だが、仮に15%に下がったとしても、昨年末の2.5%と比べれば依然として高水準だ。BMW、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲン(VW)など大手独自動車メーカーは、2025年上半期の利益が大幅に減少しており、米国関税の影響で3社合計のキャッシュフローは年内に100億ユーロ(約1兆7230億円)以上減る見通しだ。

ホワイトハウス声明ではさらに、米国はEU製品に対して「最恵国(MFN)関税」か、MFN関税と相互関税を組み合わせた15%関税のうち高い方を適用すると明記した。9月1日以降、再生不能資源(軟材を含む)、航空機や部品、非特許薬品やその原料、化学前駆体などについてはMFN関税のみを適用する方針だ。

見返りとして、EUは米国からのすべての工業製品に対する関税を撤廃し、海産物や農産物の輸入に市場開放を拡大する。対象はナッツ、乳製品、生鮮・加工果実や野菜、加工食品、農業用種子、大豆油、豚肉、バイソン肉など幅広い。

さらにEUは28年までに、7500億米ドル相当の米国産LNG(液化天然ガス)、石油、原子力関連製品を購入するほか、400億米ドル規模の米国製AI(人工知能)半導体も調達する計画。EU企業は同年までに米国の戦略分野へ追加で6000億ドルを投資し、大西洋を挟んだパートナーシップの強化を示すとした。

軍事分野では、EUが米国製防衛装備の調達を拡大。デジタル貿易ではEUが米国企業へのネットワーク使用料を課さない方針を確認し、米欧双方は電子データ伝送への関税を課さないことで一致した。非関税障壁では、自動車の認証基準の相互承認や乳製品の衛生基準緩和などが盛り込まれた。

欧州委員会は声明で、「今回の枠組み合意は第一歩に過ぎない。今後さらに幅広い分野について米国と交渉を続ける」と強調している。

Tags: , , , ,

関連記事