中国の「自動運転車ブーム」に陰り、開発各社「当面の実用化」優先
世界で巻き起こった「自動運転ブーム」が一旦、下火傾向にある。中国でも同様の傾向がみられ、自動運転分野への投資額は減少。自動運転関連の法環境が不完全な中で、自動運転車を巡る事故も多発しており、開発各社が目指す場所は、完全無人運転という“遠いゴール”から、「さしあたっての商用化・実用化」という“近いゴール”へと現実路線に変わりつつある。
事実、自動運転技術開発に取り組む中国企業は、明確な戦略転換を行っている。L4(特定の条件下で完全自動運転)の技術開発を本命としていた多くの企業が、実用化が容易なL2(部分運転自動化)へと方針を転換した。
ロボタクシーサービスで創業した自動運転技術のスタートアップ「文遠知行(WeRide)」はこのほど、自動運転L2、L3(条件付き自動運転)に対応する乗用車向けのソフトウエアを開発。同じく自動運転技術の開発を手がける小馬智行(Pony.ai)は、業務の範囲を、配車サービスや、トラック・乗用車向け運転支援システム開発へと広げた。
2013年から自動運転技術の開発に取り組む百度(バイドゥ)は20年、完全自動運転のL4技術を、その一歩手前の運転支援機能に応用。視覚センサーによるL4の自動運転技術「アポロ・ライト(Apollo Lite)」をベースに、乗用車向け自動駐車システム「アポロ・バレーパーキング(AVP)」と、自動ナビゲーションアシスト運転システム「アポロ・ナビゲーション・パイロット(ANP)」を開発した。
百度の行動は、中国自動運転業界の現状を映す鏡となっている。L4の実用化が遠い状況下、先進的な技術やハードウエアを普及が進むL2に活用することが、業界の大きな流れになっている。
自動運転分野への投資額も大きく減少した。テックメディア「新眸」の概算によると、中国の22年の自動運転分野への投資額は200億元(約3,917億円)と、932億元だった絶頂期から80%近く減少している。