新芯航途、中国初の量産型Armv9車載CPUを搭載

(新芯航途の発表より)

中国の車載AIチップ設計企業、新芯航途(蘇州)科技(XHEART、江蘇省蘇州市)は10月29日、大規模言語モデル(LLM)向けAIチップ「X7 Ultra」を正式発表した。中国で初めて量産化されたArmv9ベースの車載CPUを搭載し、次世代の自動運転システムへの採用を目指す。

李宗霖最高経営責任者(CEO)は発表会で、同社の開発理念について「大規模モデルにチップを定義させ、チップによって大規模モデルの次の進化を支える」と説明した。

実際のアプリケーションで求められるモデル性能を起点に、チップのアーキテクチャーを逆算して設計する考え方だ。計算、メモリー、データ処理の流れを再構成し、チップの仕様を決める段階からアルゴリズムチームとモデル構造や主要演算子を共同で研究。今後数年のモデル進化を見据えた設計を進めている。

公開データによると、X7シリーズのUltraチップは量産開始から8カ月で累計出荷数が20万個を超えた。現在、量産車10車種に搭載されており、40車種超から受注しているという。

モメンタと共同でチップを設計

新芯航途によると、同社は2022年の段階で、自動運転技術企業のモメンタ(Momenta)と「大規模モデルがチップを定義する」という共通認識を形成し、開発を進めてきた。

両社はチップの仕様策定段階からモデル構造と主要演算子を共同研究。機能設計から検証までをテープアウト前に完了し、21日間での適合作業も実現したとしている。

X7 UltraのAI演算性能は700TOPS。実際に量産されている自動運転大規模モデルを用いて評価しており、量子化して実装したモデルの出力と、学習後のFP32浮動小数点モデルの出力との類似度が99.99%以上となることを性能評価の条件にしている。

6つの主要技術を採用

新芯航途は、X7 Ultraに関する6つの主要技術を紹介した。

第1に、超大型コアNPUを設計した。従来は小型コア間で行っていた毎秒数百GB規模のデータ通信を、超大型コア内部の毎秒数TB規模の高速インターコネクトに集約。主要演算子には高精度の専用アクセラレーターを搭載した。

第2に、ハードウェアとソフトウェアの協調設計によって並列処理性能を高めた。演算処理と重みデータの読み込みを並行して実行できるようにし、量産型の自動運転大規模モデルを用いた実測で、NPUの演算利用率は98.7%に達したという。

第3に、AIツールチェーンを再構築した。モデル全体の融合処理を通じて計算タスクを一括して編成・最適化し、中間データを外部メモリーへ繰り返し読み書きする処理を削減。メモリー帯域の消費量を業界のフラッグシップ製品に比べて80%抑え、エネルギー効率を100%向上させたとしている。

第4に、中国で初めて量産化されたArmv9ベースの車載CPUを搭載した。複雑な制御処理やシステムのスケジューリングを担う。

第5に、専用演算ユニットによる高度な異種混載コンピューティングを実現した。LiDARの処理帯域は最大で毎秒2,000万点に達し、センサーの前処理安定性を100%向上させたという。

第6に、ISO 26262のASIL-B機能安全要件を満たし、内蔵マイコンはASIL-D認証を取得している。

大規模モデルの進化を見据えた車載半導体

発表会のパネルディスカッションでは、チューリング賞受賞者のジャック・ドンガラ氏が、アルゴリズム、ソフトウェア、半導体の各チームが設計を固める前から緊密に協力することは、大規模モデル時代に有効な研究開発手法だと指摘した。

新芯航途によると、X7 Ultraを基盤として開発される「R7 Ultra」モデルでは、パラメーター規模を5〜10倍に拡大し、安全性能も5〜10倍以上に高める計画だ。

公開情報によると、モメンタは世界上位10社の自動車メーカーと提携している。今年7月時点で、同社の量産車向けシステムの搭載台数は140万台を超えた。累計で採用が決まった車種は240車種を上回り、そのうち120車種超がすでに納車されている。

モメンタ発の車載AIチップ企業

新芯航途(XHEART)は2023年12月に設立され、本社を江蘇省蘇州市に置く。モメンタの半導体チームを母体とする車載AIチップ設計企業で、主に自動運転向け大規模モデルチップの研究開発と量産化に取り組んでいる。

同社は設立当初から、「大規模モデルがチップを定義する」という技術路線を掲げてきた。実際のアプリケーションで必要とされるモデル性能を起点にチップアーキテクチャーを設計し、仕様策定段階からアルゴリズムチームとモデル構造や主要演算子を共同研究している。

資金調達では、これまでに複数回の調達を実施し、累計調達額は約50億元に達した。投資家には、上海汽車、奇瑞汽車、長鑫科技、ルノー・グループなどの産業系戦略投資家のほか、国家人工知能産業投資基金、深セン創新投資、国家開発銀行系の国有資本プラットフォーム、鼎暉、IDG、NIO Capital、順為資本などの金融投資機関が名を連ねている。

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