サムスン電子、27年にシリコンフォトニクスの受託製造事業へ参入計画か

AIの計算能力をめぐる競争が激化し、データセンターの消費電力と通信帯域が物理的な限界に近づくなか、韓国サムスン電子はシリコンフォトニクスをHBM(高帯域幅メモリ)や先端パッケージングと組み合わせ、半導体受託生産(ファウンドリー)世界大手の台湾積体電路製造(TSMC、台積電)の半導体受託製造(ファウンドリー)市場における首位の座に改めて挑もうとしている。

韓国メディアのMTNは16日、サムスン電子が2027年にシリコンフォトニクス分野へ本格参入する計画だと報じた。当初は12インチウエハー技術を活用し、顧客向けに光集積回路(PIC)を受託製造する。その後、光電融合技術や光パッケージングへと事業領域を拡大する方針だ。また、技術基盤を補完するため、関連企業の買収も検討しているという。

サムスンのシリコンフォトニクス戦略は、突然浮上したものではない。2026年3月にロサンゼルスで開催された光ファイバー通信関連の国際会議「OFC 2026」では、サムスンのファウンドリー部門がシリコンフォトニクスの受託製造市場への参入を初めて公表した。その際、同社は技術開発の進展も明らかにした。 300ミリウエハー対応のプロセス・デザイン・キット(PDK)はすでに整備され、顧客が試作を開始できる段階にあるという。さらに、ベルギーのマイクロエレクトロニクス研究機関imecによる独立検証では、シリコンベースの変調器が1チャネル当たり224Gbpsの伝送速度を実現した。これは、4チャネル構成の800G、または8チャネル構成の1.6T光トランシーバーに必要な性能水準に相当する。

サムスン幹部はMTNに対し、TSMCとの差は技術力そのものよりも市場シェアにあるとの認識を示したという。また、他のファウンドリーには3次元集積回路(3D IC)技術が不足しており、超大型のターンキーソリューションを提供できないと指摘。先端パッケージング、メモリー、ロジック半導体を一体化し、TSMCに正面から対抗できる企業はサムスンだけだとの見方を示した。

サムスンのシリコンフォトニクス開発ロードマップ

サムスンの開発計画は、段階的な技術導入を軸に構成されている。同社は2027年に、熱圧着接合技術を採用した光エンジンを投入する計画だ。光モジュールをスイッチチップの基板に直接実装することで、信号損失の低減を目指す。

2028年には、より高密度な光電融合を実現するため、ハイブリッド銅接合技術を導入する。さらに2029年には、光エンジンとスイッチチップを一体化した共封止光学(CPO)について、設計から製造、パッケージングまでを一貫して提供する受託製造サービスを開始する方針だ。

一方、サムスンはFormFactorとMPIのプローブステーション設備を導入し、光デバイス向けウエハー検査能力を自社で構築したと伝えられている。両社の同種設備は、それ以前にTSMCのCPO関連試験で認証を取得していたという。

また、サムスンは大手光通信モジュールメーカーから受注を獲得し、2026年下半期の量産を予定しているとも報じられている。今回のMTN報道では、技術開発の期間短縮と知的財産の確保を目的に、シリコンフォトニクス専門企業の買収も検討していることが明らかになった。

物理的限界、消費電力の壁、シェアの壁

サムスンがシリコンフォトニクスに注力する背景には、半導体の性能向上を支えてきた従来の技術が限界に直面していることがある。

調査会社Yole Groupによると、AIモデルの規模は約2年ごとに100倍に拡大する一方、計算能力の向上は同期間で約3.3倍にとどまる。このため、データセンターでは約2年ごとに、従来の約70倍に相当する相互接続回線を整備する必要が生じるという。

従来の銅配線による通信では、帯域幅と消費電力の両面でこうした拡大ペースへの対応が難しくなっている。光通信は、もはや選択肢の一つではなく、不可欠な技術になりつつある。

米エヌビディアが2025年に発表したシリコンフォトニクス採用のスイッチ製品「Spectrum-X」と「Quantum-X」について、同社の公表データでは、CPOアーキテクチャーは従来のプラガブル方式と比較して、レーザーの使用量を4分の1に削減し、エネルギー効率を3.5倍に高めるほか、ネットワークの耐障害性を10倍、導入速度を1.3倍に向上させるとしている。

市場の資金の流れも、この技術への期待を裏付けている。2026年3月2日、米半導体大手のNVIDIA(エヌビディア)はLumentumとCoherentにそれぞれ20億ドル(約3158億円)を投資すると発表した。複数年にわたる数十億ドル規模の調達契約も組み合わせ、先端レーザーの供給能力を確保する狙いがある。

サムスンにとって、こうした顧客企業の顔ぶれは今後の事業展開を占う手掛かりとなる。CoherentとLumentumはいずれもエヌビディアのCPOエコシステムを支える主要サプライヤーであり、サムスンのシリコンフォトニクス受託製造事業にとっても、有力な初期顧客候補とみられる。

より根本的な背景には、サムスンのファウンドリー事業が直面する構造的な課題がある。調査会社TrendForceのデータによると、2026年第2四半期の世界上位10社のファウンドリー売上高に占めるTSMCのシェアは72.5%に達した一方、サムスンは5.9%にとどまった。HBM市場でSKハイニックスに後れを取り、HPC(高性能コンピューティング)やAI需要への対応でもTSMCに遅れた。

韓国の業界関係者も、サムスンに必要なのは技術の補完だけではなく、半導体設計資産と先端パッケージングを含む総合的な競争力の強化だと指摘している。

光半導体市場の現状

TSMCのCPO向けプラットフォーム「COUPE」は、光集積回路と電子集積回路をSoICによる3次元積層技術で統合しており、現在のCPOエコシステムにおける事実上の標準となっている。

エヌビディアの「Quantum-X」「Spectrum-X」や、ブロードコムの「Tomahawk」シリーズも、この技術体系を基盤としている。技術ロードマップの進展度では、TSMCがサムスンを1~2年程度リードしているとみられる。

追随する企業の動きも活発だ。米GlobalFoundriesは2025年11月、シンガポールのAdvanced Micro Foundryを買収した。これにより、売上高ベースで世界最大の純粋なシリコンフォトニクス専業ファウンドリーとなった。

UMCは2025年12月、imecの「iSiPP300」プラットフォームのライセンスを取得し、2026~2027年のリスク生産を目指している。Tower Semiconductorも、AI向け光モジュール需要の拡大を背景に、シリコンフォトニクス関連売上高が四半期ベースで約11%増加したという。

業界調査会社LightCountingは、2026年を「シリコンフォトニクスの年」と位置付け、同年の光モジュール売上高の過半がシリコンベースの変調器を採用した製品から生まれると予測している。

ただし、サムスンにとって懸念材料もある。同社については、これまで公表された量産実績や設計採用実績が確認できていないとの分析もある。業界のボトルネックも、設計段階から歩留まり、検査、リン化インジウム(InP)レーザーなど上流部材の供給能力へと移りつつある。

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