ロシアの国家半導体チーム、 中国の中小規模ファウンドリーへの出資を検討か

ロシア紙のコメルサントは27日、ロシアで新たに設立された半導体分野の「国家チーム」である統合マイクロエレクトロニクス(ОМК、OMK)が、中国の複数の半導体工場への出資を検討していると1面で報じた。狙いは、株式投資を通じて中国の生産能力を確保し、国内の半導体製造能力が大きく遅れている状況を打開することにある。
ロシア国内の半導体製造能力は、世界の水準から大きく遅れている。2026年9月時点で、ロシア国内のすべてのウエハー工場における最先端プロセスは、依然として90ナノメートルにとどまっている。これは2003年ごろの技術水準に相当し、現在主流となっている先端チップの製造には対応できない。そのため、産業用制御、自動車電子機器、通信機器などの需要に応えることが難しくなっている。
世界の最先端プロセスと比較すると、台湾積体電路製造(TSMC)とサムスン電子は2025年末までに2ナノメートルプロセスの量産を実現した。
一方、ロシアが従来依存していた海外の先端ファウンドリーへの委託ルートは、すでに事実上断たれている。TSMCは2022年3月からロシア企業向けの半導体受託生産を停止し、同月にはサムスンもロシア市場から正式に撤退した。
ロシアの半導体設計企業であるバイカル・エレクトロニクス、Modul、エルビスなどは、それ以前から海外のファウンドリーに長く依存していた。供給が断たれた後は、発注先を中国の工場へ切り替えざるを得なくなった。
しかし、「中国に発注を移す」ことにも現実的な問題がある。中国の工場は生産能力に限りがあり、発注時期や割り当ては顧客の優先順位に左右される。ロシア企業は「域外の新規顧客」とみなされるため、安定した生産枠や予見可能な価格を確保するのは容易ではない。
ロシアの半導体「国家チーム」、1兆ルーブル規模の資金を確保
今回、中国の半導体工場への出資を検討しているOMKは、ロシアの国内マイクロエレクトロニクス産業を再生するために設立された国家的な統合企業体だ。設立準備は2026年1月に正式に始まった。OMKは、ロシア国内の主要半導体企業であるミクロン、アングストレム、NM-Techを統合し、設計から製造までの一貫した産業チェーンを構築する計画だ。
ロシア政府は同企業体を支援するため、2030年までに総額1兆ルーブル(約789億元、日本円換算で約1兆6,000億円)の特別投資計画を決定した。このうち7,500億ルーブルを政府が拠出し、残りの2,500億ルーブルはロシア連邦貯蓄銀行(Sberbank)が提供する。
大手ではなく中小工場に出資、専用ラインを確保
ロシア側の今回の投資方針は、無差別な買収ではなく、明確な差別化戦略に基づいている。関係者によると、OMKは国内の大手半導体メーカーの買収を明確に見送り、規模が小さく、知名度も比較的低い中小規模の成熟プロセス工場をターゲットとする方針だ。対象となるプロセス世代は40~180ナノメートルが中心となる。こうした工場は規模が比較的小さく、生産計画の柔軟性も高い。そのため、外部からの制裁リスクを可能な限り回避できるとみられている。
投資の核心は、経営権の取得ではなく、生産能力の専用使用権を確保することにある。関係者は、出資比率そのものは重要ではなく、株主としての立場を利用して中国のウエハー工場と長期契約を結び、1本または複数の生産ラインをロシア向けの受注に専用化することが重要だと説明している。これにより、通常の商業ファウンドリー契約では得にくい価格の透明性と、優先的な生産枠を確保できる可能性がある。
ロシア連邦税務局およびバウマン・モスクワ国立工科大学の科学教育センター副センター長を務めるアレクセイ・エルショフ氏は、株主になる最大の利点は、明確な「待機列の順位」と予見可能な価格を得られることだと指摘した。長年、生産能力の制約に直面してきたロシアの半導体産業にとって、現実的な選択肢になる可能性がある。
出資しても技術を取得できるわけではない
ただし、株式取得と技術の獲得は別問題だ。金石法律事務所のパートナー、マクシム・スルーキン氏は、単なる出資によって、ロシア側が中国企業の半導体特許、生産プロセス、基幹技術に関する文書などの重要な知的財産を自動的に取得できるわけではないと指摘する。技術面での協力を求める場合は、別途、技術ライセンス契約や技術協力契約を締結する必要がある。
また、OMKがロシア国有企業であることから、投資行為そのものが制裁リスクを招く可能性もある。
スルーキン氏によると、中国は原則としてロシア企業による投資を禁止していない。ただし、投資主体が政府と関係している場合や、投資主体そのものが制裁対象となっている場合、中国の工場側が受け入れを拒否する可能性がある。
ロシアの専門家コンスタンチン・ポズニャコフ氏も、現在の中国政府は、外部資本や技術の誘致には関心を持っているが、自国の工場の経営権を他国に共有することには慎重だと分析する。とりわけ、制裁下にある相手国の企業に経営上の関与を認めることには、慎重にならざるを得ないという。
「中国製チップの購入」から「中国での生産参加」へ
OMKが中国の工場への出資を検討していることは、一見すると一つの商業的な判断にすぎない。しかし、その動きが発するシグナルは、取引そのものよりも重要だ。第一に、ロシアは「自力では先端半導体を製造できない」という現実を認めたことになる。
90ナノメートルという技術的な上限が存在するなか、1兆ルーブル規模の投資計画は野心的ではあるものの、半導体製造は資金を投じるだけで短期間に技術的な遅れを取り戻せる産業ではない。国内工場の生産能力が徐々に向上するのを待つよりも、まずは海外の生産能力を「購入」する方法を模索する方が現実的だと判断したとみられる。
第二に、ロシアは半導体サプライチェーンの軸足をさらに中国へ移しつつある。TSMCとサムスンがロシア市場から撤退した後、中国の工場はロシアの半導体設計企業にとって、数少ない選択肢の一つとなっている。今回の出資は依存の出発点ではなく、すでに進んでいる中国依存をさらに深める動きといえる。
第三に、この構想が実現するかどうかは、ロシア側ではなく、中国の工場が受け入れるかどうかにかかっている。ロシア側の関係者自身も、この計画には「双方の合意が必要だ」と認めている。現時点では、中国のウエハー工場への投資計画や取引件数などの詳細は、OMKの正式な戦略にはまだ盛り込まれていない。ロシアは「中国製チップを調達する」段階から、「中国の半導体生産に参加する」段階へ踏み出そうとしている。




