世界のAIエージェント、2035年に9000億体へ=世界人口の約100倍に
ファーウェイが予測

中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ、広東省深セン市)は9月16日、「行動から未来へ」をテーマとする「インテリジェント・ワールド」探究シリーズのオンライン発表会を開催し、2035年までに世界で稼働する自律型AIエージェントは9000億体に達するとの予測を発表した。これは同時期の世界人口予測の約100倍に相当する。
ファーウェイは、「インテリジェント・ワールド2035:ビジョンから行動へ」と「グローバル・デジタルインテリジェンス指数(GDII)2026」の2つの研究成果を発表した。「インテリジェント・ワールド」の将来像を描いた2024年、10大技術トレンドを発表した2025年に続き、今回初めて「Agentic AI(エージェンティックAI)」時代が直面する主要課題を取り上げ、インテリジェント・ワールドの実現に向けた10の重要テーマを提示した。産業界に対し、ビジョンを具体的な行動へと移すための研究・開発の指針を示した形だ。
ファーウェイの汪涛(ウィリアム・ワン)副董事長兼輪番董事長は発表会で、「Agentic AIは今回の変革の中核となる変数だ」と指摘した。
AIは生産方式や競争力を左右する要素、さらには産業構造そのものを変えることになり、一連の重要な課題に直面することになるという。「方向性はすでに明確になっているが、ビジョンを現実のものにするには着実な行動が必要だ」と述べた。
今回の報告書は、AI革命によって生じている重要な変化を出発点として、その背後にある課題を分析。そのうえでAgentic AI時代に向けた具体的な行動として、「インテリジェント・インフラの構築」と「ユーザー体験および生産モデルの再構築」を提言している。
報告書によると、Agentic AIの進展によってデジタル世界は「アプリケーション中心」から「AIエージェント中心」へと移行する。AIエージェントは、環境を継続的に認識し、自律的に推論・意思決定を行い、必要に応じてツールを動的に呼び出しながら、リアルタイムで人間とやり取りする能力を持つ。こうした一連の処理のたびに、大量の「トークン(Token)」が生成・消費される。
ファーウェイは、今後10年間でAIを取り巻くエコシステムが根本的に変化すると予測する。
- AIエージェントが急増:2035年までに、世界で稼働する自律型AIエージェントは9000億体に達する見通し。これは同時期の世界人口予測の約100倍に相当する。
- トークン消費量が急増:AIエージェントが環境を継続的に認識し、推論、意思決定、外部ツールの呼び出しを行うため、世界の年間AIトークン消費量は現在の10万倍に拡大する。エージェント関連のトラフィックが全体の90%以上を占めるとみられ、従来のインターネットサービスを大きく上回る計算能力、ネットワーク、クラウド基盤が必要になる。
- 通信トラフィックの構造が転換:現在は「人間がAIに質問する」ことが中心だが、今後は「大量のAIエージェントが自律的にタスクを実行し、互いに連携しながら継続的にトークンを消費する」形へと変化する。
AIエージェント同士が高頻度で「群体協調」
ファーウェイの予測の核心は、AIエージェントが人間に1対1でサービスを提供する単なるツールではなく、現在のウェブページやAPI、スマートデバイスのように、社会のさまざまな領域に浸透していくという見方にある。
2035年に9000億体という規模に達し、人間の人口の100倍になると予測される背景には、複数の領域でAIエージェントの需要が急拡大することがある。
- 多層的なパーソナルエージェント:将来的には、1人が「万能型アシスタント」1体を持つだけでなく、数百~数千の小型AIエージェントを使い分けるようになる。スケジュール管理、価格比較や買い物、健康データ管理などを専門に担うエージェントのほか、ほかのAIエージェントからの不要な働きかけを遮断する「逆向きエージェント」まで登場すると想定している。
- 企業・産業チェーンの再編:企業活動では、各職務、サプライチェーンの各拠点、さらには個々の機械設備に1体または複数のAIエージェントが搭載される。これらが在庫管理、品質検査の予測、国際通関、契約監査などを自律的に担い、人手を介さない効率的な協調を実現する。
- IoTから「IoA(Internet of Agents)」へ:スマートカー、ドローン、工場のセンサー、家電など数十億台に上るIoT機器が、それぞれ独立した意思決定能力を持ち、デジタル世界における自律的なネットワークノードへと進化する。
こうした9000億体のAIエージェントは、相互に高頻度で「群体協調(Multi-Agent Collaboration)」を行うことになる。これが、ファーウェイがトークン消費量の10万倍という大幅な増加を予測する理由の一つだ。
AIエージェント同士が指示を伝達し、目標をすり合わせ、データを交換することで、人間による直接的な介入は大幅に減少するとみている。
10の重要テーマと研究領域
こうした認識を踏まえ、報告書では10の重要テーマと研究領域を掲げた。
- 自律的な認知能力と汎用性を備えたAGIの構築
AGIが物理世界へ進出することは、その形成に不可欠な道筋となる。言語知能、身体性知能、科学知能など複数の領域を連携させて開発を進める必要がある。 - AI計算基盤の大規模化
コンピューティングクラスターの規模を100倍に拡大し、AIエージェントのタスク処理コストを1000分の1に引き下げる。計算アーキテクチャも「単一チップの計算能力」から、「スーパーノード」を中核とする高いトークン変換効率のシステムへ移行する。 - 新たなストレージ・メモリーシステムの構築
因果関係の正確性と追跡可能性を備えた新しい記憶システムを構築し、「データ」から「知識と記憶」への進化を促す。 - 通信システムへのAIの全面的な統合
ユーザー体験を中心としたインテリジェントな通信基盤を構築する。 - 半導体設計手法・ツールの進化
「タオの法則(韜定律)」に基づくチップ設計手法とツールを深化させ、「幾何学的な微細化」から「時間的な微細化」へと重点を移すことで、遅延とエネルギー効率を同時に最適化し、半導体産業の継続的な進化を支える。 - Agent OSの構築
環境を制御する段階から自律的に進化する段階へ移行し、Agent OSをAIエージェントに特化した基盤技術とする。その中核能力を「(協調力×実行力×記憶力×接続力)^進化力」と表現している。 - 新たな端末インテリジェンスの形態を定義
ユーザーが意識することなく適応し、どこでも継続的に利用できる端末インテリジェンスを実現し、デバイスや利用シーンをまたいでAIサービスが継続的に利用者に寄り添う環境を構築する。 - 自動運転の自己学習と極限レベルの安全性
自動運転技術の自己学習能力を高め、安全性を追求することで、自動車を単なる移動手段から「移動する身体性AIエージェント」へと進化させる。 - 電力供給と放熱の課題を克服
AIデータセンター(AIDC)の計算能力をさらに大規模化するため、電力供給と熱管理の課題を解決する。 - 自律型AIエージェントの安全・プライバシー保護
インテリジェント・ワールドを支える、信頼性と制御可能性を備えたセキュリティー基盤を構築する。
これらの課題に対し、報告書はAgentic AI時代に向けて、トークンを軸とする「生産―運搬―応用―防護」の全工程をカバーするインテリジェント・インフラの構築を提言している。
スーパーノードとオープンなエコシステムによってトークンの生産効率を高め、インテリジェントな通信基盤によってトークンを効率的に流通させる。同時に、Agentic AIに最適化したクラウドプラットフォームによってAIの産業利用を加速させ、最終的にはトークンを実際に体験できるインテリジェントサービスへと転換する。これにより、個人ユーザーの体験と企業の生産モデルを再構築するとしている。
今後5年間でAIが27兆ドル超の経済価値を創出
同日の発表会では、ファーウェイと清華大学経済学研究所が共同でまとめた「グローバル・デジタルインテリジェンス指数(GDII)2026」も発表された。
同報告書は、経済学、社会学、ICT産業、学術界など幅広い分野の専門家の知見を集約し、インテリジェント経済の発展に向けた指針を示すことを目的としている。
報告書によると、今後5年間でAIは累計27兆ドル(約4212兆円)を超える経済価値を生み出す見通しだ。また、世界のデジタル・インテリジェンス基盤への投資も加速し、年平均成長率(CAGR)は19.14%に達すると予測。2030年には投資額が4兆ドルを超え、インテリジェント経済の持続的な拡大を支える基盤になるとしている。
同報告書は、デジタル・インテリジェンス社会における中核的な生産要素を「データ」「ICT人材」「デジタル・インテリジェントな生産ツール」と再定義した。
また、「運力・計算力・存力」の一体化を産業高度化を支える「肥沃な土壌」と位置付け、90カ国を対象にデジタル化・インテリジェント化の発展水準を体系的に評価。「潜在力」「加速」「先行」の3段階に分類した。
各国の政策立案者に対しては、AI時代に万人に共通する単一の発展モデルは存在しないと指摘。その一方、定量的な診断を通じて、それぞれの国が注力すべき分野を特定し、自国の事情に合った発展の道筋を描くことが可能だとしている。
ファーウェイ、5つの提言
産業の将来を見据え、ファーウェイは「長期主義」「人間中心」「テクノロジーの善用」「オープンな協力」「システム思考」の5つを掲げ、技術革新を産業の発展につなげるよう呼びかけた。
汪氏は、「ビジョンは描くだけで自動的に実現するものではない。行動こそが未来を測る尺度だ」と述べた。そのうえで、「ファーウェイは世界の顧客やパートナーとともに、地に足をつけて探究を続け、今日の一つひとつの実践を、インテリジェント・ワールド2035へと向かう確かな一歩にしていきたい」と語った。




