26年の半導体戦争、米エヌビディアがASIC陣営をけん制

米半導体大手のNVIDIA(エヌビディア)のJen-Hsun Huang(ジェンスン・ファン)最高経営責任者(CEO)は、米ラスベガスで開催されたテクノロジー見本市「CES」は、「ASIC(特定用途向け集積回路)プロジェクトの9割は失敗する」と断言し、米Google(グーグル)が開発したAI(人工知能)向けカスタム半導体「TPU」に代表されるASIC陣営をけん制した。

今年はGPU(画像処理半導体)とASICのせめぎ合いが進みそうだ。鍵を握っているのは、半導体受託生産(ファウンドリー)世界大手の台湾積体電路製造(TSMC、台積電)の先端パッケージ技術「CoWoS」の生産能力だ。CoWoSの予約・配分を精緻に分解すれば、26年のAI向け計算チップの出荷構図はほぼ見えてくる。言い換えれば、「チップ戦争」はTSMCが保有する年間約115万枚分のCoWoSウエハー能力に命運を託している状況だ。

AIコンピューティング需要の急拡大を背景に、競争の軸は三つに集約される。第一は計算アーキテクチャだ。汎用GPU(GPGPU)では、「CUDA」という20年にわたるエコシステムを築いたエヌビディアが圧倒的な王者として君臨し、「H200」や「GB200」、26年投入予定の「Vera Rubin」へと進化を続けている。HBM(高帯域幅メモリ)とGPU間データ伝送技術「NVLink」による大規模並列処理が、その性能向上の源泉だ。

一方、グーグルのTPUやAmazon(アマゾン)「AWS」の「Trainium」に代表されるASICは、クラウド推論のように負荷が固定化された用途で、アルゴリズム特化により電力効率と総保有コスト(TCO)で優位性を発揮する。Broadcom(ブロードコム)やMarvell(マーベル)、世芯電子(Alchip)などの設計企業は、クラウド大手向けにASICを受託することで、AIチップの巨大市場に食い込んできた。

TSMCのCoWoSが鍵

第二の軸は製造プロセスだ。7(ナノメートル)nmから5nm、3nm、そして25年末に量産予定の2nmへと微細化は進むが、コストは急騰し、2nmのウエハー価格は3万ドル(約474万円)に達する。進化の速度は鈍化し、「消費電力の壁」「メモリの壁」も顕在化している。

そこで第三の軸として浮上するのが先端パッケージである。TSMCのCoWoSは、計算チップレットとHBMをシリコン中介層で高密度に接続する異種集積技術で、単一ダイの限界を超える鍵となった。中介層面積はすでに2800平方ミリに達し、トランジスタ数とメモリ容量、通信帯域を飛躍的に高めている。エヌビディアのGPUであれ、クラウド大手のASICであれ、最先端AIコンピューティングからCoWoSは切り離せない。

TSMCのCoWoS能力は、月産1万2000枚規模から25年末には8万枚、26年末には12万枚へと拡大する見通しだ。年間平均で約9万6000枚、すなわち115万枚が26年の有効供給量となる。この配分をめぐり、技術力、資本力、地政学が絡む複雑なゲームが展開される。

最大の受益者はエヌビディアだ。CoWoSの共同定義者であり最大の投資家でもある同社は、全体の約6割を確保するとみられる。米Advanced Micro Devices(AMD、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)も約9万枚を押さえ、前年比6割超の増加となる。一方、ASIC陣営ではブロードコムが先頭に立ち、26年の予約量は20万枚規模に拡大。グーグルTPU向けが6割強、Meta(メタ)向けが約2割、OpenAIの内部コード名「Titan」も年末から加わる。台湾のファブレス半導体設計企業、聯発科技(MediaTek)は新規参入組として、推論向けTPU v7eを担い、27年には出荷の主力となる見通しだ。米Apple(アップル)のAI ASIC「Baltra」も28年の登場に向けて準備が進む。

こうした配分を基に試算すると、エヌビディアが確保する約66万枚のうち1割を「Hopper」世代に振り向けた場合、H200の年間生産量は約190万個に達する計算となる。CoWoS総量で見れば、GPGPU陣営(エヌビディア+AMD)は約75万枚を確保し、ASIC陣営の約37万枚を大きく上回る。依然としてGPUが圧倒的だ。

性能面も格差

性能面でも差は大きい。エヌビディアのB300はFP8で10PFLOPSに達し、ASICで最強のグーグルTPU v7pでもその半分程度にとどまる。CES 2026でファンCEOは、RubinがBlackwell比で推論性能5倍、学習性能3.5倍に向上すると語り、GPUとASICの性能差が縮まらないことを示唆した。価格面でも、GPUは1個3万ドル超、将来は4万~5万ドルに達する見込みで、ASICの内部取引価格はそれを大きく下回る。

一方、ASICの本質は「財務最適化」にある。ソフトウエアスタックを完全に掌握し、巨大な規模を持つクラウド事業者だけが、ASICでTCOを極限まで下げられる。一方、エヌビディアはCUDAに加え、NVLinkやNVSwitchを含む“ターンキー”のシステム全体を提供し、圧倒的な価値を生み出している。

今後はGPUとASICが併存する混合世界が進むとみられる。最先端モデルの研究・学習はGPUが担い、コストに敏感な大規模推論はASICが担う。そのどちらの陣営が勝っても、CoWoSという「弾薬」を握り、価格決定権を持つTSMCこそが、このチップ戦争における究極の勝者となりそうだ。

Tags: , , , , , , , , ,

関連記事