世界のIC設計勢力図が変動、中国本土が台湾を初めて上回る

2026年にはシェア45%へ

AI(人工知能)ブームを背景に、世界の半導体勢力図が大きく動いている。米市場調査会社IDCの最新データによれば、米国はAIチップの優位性を武器に世界IC設計分野の首位を堅持する一方、中国本土(中国大陸)のIC設計企業の市場シェアが2025年に台湾を初めて上回り、26年には約45%に拡大すると予測している。これにより、台湾は世界3位へと順位を落とす見通しだ。

中国メディアによると、IDCが公表した最新の世界半導体レポートでは、26年の半導体市場規模が8,890億ドル(約137兆7950億円)に達すると試算されている。米国はNVIDIA(エヌビディア)や米半導体大手、Advanced Micro Devices(AMD、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)といった大手企業に加え、クラウド大手が自社製ASIC(特定用途向けチップ)の開発を加速しており、IC設計分野での圧倒的優位は揺るがない。

台湾の順位低下についてIDCは、「独自開発のAIチップが不足していることが最大の要因」と指摘する。台湾勢は聯発科(MediaTek)を除くとAIチップによる売上貢献が乏しく、世芯電子(Alchip)や創意電子(Global Unichip)などIC設計サービス企業を加えても、中国本土勢の成長スピードに追いつくのは難しい状況だ。

一方、中国本土は政府の半導体自立政策と巨大な内需に支えられ、サプライチェーンが急速に発展。華為海思(HiSilicon)は昇騰AIチップや麒麟(Kirin)プロセッサで技術的突破を果たし、寒武紀(Cambricon)もAIチップ出荷が大幅増加している。また、兆易創新(GigaDevice)もメモリやMCU(マイコン)の旺盛な需要を背景に成長を続け、IC設計全体を強く押し上げている。

中国半導体行業協会IC設計分会のデータもこの傾向を裏付ける。25年の中国本土IC設計売上高が8,357億3,000万元(約18兆3860億6000万円)に達し、前年比29.4%増を見込むと説明。ドル換算では初の1,000億ドル突破となる見通しで、産業規模はなお拡大を続ける。

もっとも、産業構造には課題も残る。中国本土のIC設計は通信と消費電子向けが依然6割超を占め、コンピュータ向けは7.7%にとどまる。国際平均の25%を大きく下回り、製品構成は中・低価格帯に偏っているのが現状だ。

今後について中国政府は、製造力ではまだ米国に及ばないものの、その差は縮小していると強調。電気自動車とAIという二大成長エンジンを背景に、中国本土のIC設計産業は新たな成長局面に入るとの見方が広がっており、30年までに産業規模1兆元の達成が目標に掲げられている。

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