中国の無人配送ロボが資本調達加速、コスト低下で普及

中国で、自動的に荷物を運ぶ無人配送ロボットの開発を進める企業が、再び資本の調達を加速している。チップやセンサー性能の向上とLiDER(ライダー、高性能センサー)などのコスト低下を受けて物流企業などでの普及が拡大しているためだ。

中国の無人配送ロボットのスタートアップの新石器慧通(北京)科技(Neolix)は10月23日、6億ドル(約912億円)超のDラウンドを獲得した。中国の自動運転分野で過去最大規模のプライベートファイナンスであり、2025年における中国民間資金調達でも最大級の案件となった。資金は主にアルゴリズム開発と技術研究、異なる商用シナリオに対応した新製品の開発、サービスネットワークの拡充、ユーザー体験の強化に充てられる予定だ。

同業の九識智能(蘇州)(ZELOS)は10月20日、1億ドルのB+ラウンド資金調達を完了。4月にはすでに3億ドル規模のBラウンドを終えており、半年間で連続して2回の大型資金調達を実現した。この動きは、投資家が同社の成長性に強い信頼を寄せていることを示している。

L4(特定の条件下で完全自動運転)レベル自動運転を手掛ける白犀牛智達(北京)科技も8月にB+ラウンドを完了、Bラウンドを含めた累計調達額は約5億元(約107億円)に達した。2019年に元百度(バイドゥ)の自動運転チーム出身の朱磊氏と夏添氏が設立した同社は、全スタック型の無人配送ソリューションを開発し、商用運行を行う企業だ。今年3月には、大手商用車メーカー、東風商用車の元総経理・黄剛氏が総裁として就任し、経営体制を強化した。

チップやセンサー性能の向上とコスト低下

新戦略低速自動運転産業研究所の集計によると、25年第3四半期(7〜9月)における国内無人配送ロボット分野の資金調達総額は8億9700万元に達した。近年の傾向として、投資の焦点は「試行検証」から「スケール化・商業化」へと移行している。同研究所は「需要面では物流業界を中心に無人車の需要が“概念”から“必需”へと変化している。技術面でも半導体チップやセンサー性能の向上とLiDERなどのコスト低下、ソフトウェアの成熟が背景にある」と指摘する。

こうした資金流入の背景には、テクノロジー大手や物流企業による本格的な戦略投資がある。4月には中通快遞(ZTO Express)が新石器と戦略提携を締結し、1万台の無人配送ロボットを導入すると発表。7月には申通快遞(STO Express)が菜鳥無人車と提携して商用化を加速、インターネット通販大手の京東集団(JD.com)傘下の物流会社、京東物流(JD Logistics)は今後5年間で100万台の無人車と10万機のドローン調達を表明した。

一方、物流大手の順豊(SFエクスプレス)は独自の展開を進めている。支線輸送、短距離接続、施設内搬送など多様な場面での無人配送ロボットの運用を拡大。25年上半期までに19省72都市で1,800台超を稼働させている。国海証券の統計では、中通快遞が約1,000台、円通速遞が約500台、韵達股份が100台超、申通快遞が200台超を導入しているという。

27年には国内外で10万台規模に

しかし、商用化の勢いの裏で立ちはだかるのが「道路走行権(路権)」の壁だ。道路走行権は無人配送ロボットが合法かつ安全に公道を走るための“通行証”であり、都市ごとの管理制度、政府の許可文書、車両ナンバー(いわゆる“鉄牌”)の3要素が求められる。各社は異なる対応策を採用しており、九識智能は顧客による自主申請を支援する制度を整備、新石器は申請代行方式をとっているが、全国的に共通する課題だ。

さらに「安全性」も最大の懸念だ。低速走行とはいえ、歩行者や他車、動物、障害物など多様な要素との複雑な駆け引きを伴う。最近発生した交通事故を受け、技術の信頼性に対する社会的な不安が再燃している。

それでも、政策の推進とコスト低下が市場の拡大を支えている。特に、LiDARの価格下落、大量調達によるスケールメリット、国産車載用チップの成熟、演算効率を高めるアルゴリズムの進化が相まって、車両製造コストを大幅に押し下げている。コスト低下はそのまま商用化の実現可能性を高める要因となっている。関連予測では、27年には国内外を合わせ10万台を超える需要が発生するとみられている。

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