米OpenAI、Broadcomと数十億ドル規模のAIチップ開発契約を締結

米AI(人工知能)大手OpenAIは13日、米半導体大手Broadcom(ブロードコム)と前例のない大規模提携を結び、今後4年間で総計10ギガワット(GW)規模の演算能力を備えたカスタムAIチップおよび計算システムを共同開発・導入する計画を発表した。OpenAIが自社開発チップ分野に本格参入する節目となるとともに、急増するAI計算需要に対応するための長期戦略の一環とされている。

OpenAIは自社設計のGPU(画像処理半導体)の開発を進めており、大規模AIモデルの研究開発(R&D)で得た知見をハードウェア設計に直接生かす狙いがある。発表された合意によれば、カスタムチップはOpenAIとBroadcomが共同で設計し、2026年下半期からブロードコムが順次展開を開始する予定だ。契約の詳細な金額は公表されていないが、関係筋によると取引規模は数十億ドルに達するという。

このニュースを受け、Broadcomの株価は米国市場の取引開始直後に一時10%近く上昇した。

Broadcomは近年、大手テクノロジー企業向けにAIチップのカスタム設計を進めており、OpenAIとの協業は約18カ月前から始まっていた。当初はAIアクセラレーターの共同開発に焦点を当てていたが、その後、サーバーラックやネットワーク機器、データセンター接続技術など、幅広い分野へと協力範囲が拡大している。

新たに開発されるサーバーラックには、Broadcomの高性能イーサネット技術と高度な接続ソリューションが採用される予定で、OpenAIが自社で建設するデータセンターおよび提携先施設に配備される見通しだ。これにより、AIモデルの継続的なトレーニングや推論処理を支える基盤が強化されることになる。

今回の提携により、OpenAIがブロードコム、NVIDIA(エヌビディア)、Advanced Micro Devices(AMD、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)などから確保する総計算能力は26GWに達する見込みだ。これは、ニューヨーク市の夏季電力需要の2倍以上に相当する膨大な規模となる。

この巨大な算力確保には莫大なコストが伴う。OpenAIは今後数年間で数千億ドル規模の資金を計算資源およびインフラ整備に投じる計画だという。OpenAIの25年の売上高は130億ドルに達する見込みだが、演算能力拡張のスピードを維持するには指数関数的な成長が求められるとされている。

OpenAIのSam Altman(サム・アルトマン)最高経営責任者(CEO)とGreg Brockman(グレッグ・ブロックマン)社長は、「現在の演算能力ではまだ全く足りない」とコメント。AI製品需要の急増を受け、今後世界各地で複数の大規模データセンターを新設し、次世代AIモデルの開発と運用を支える方針を示している。

関係者によると、アルトマン氏は社内会議で「33年までに総計250GWの演算能力を整備する」という長期目標を明らかにしたという。これは、現在の世界全体のAI計算能力をはるかに上回る水準で、総投資額は10兆ドルを超える可能性がある。アルトマン氏は、この壮大な計画を支えるために新しい資金調達の仕組みを模索中だと述べたが、具体的な内容は明かされていない。

現在、OpenAIの企業評価額は5,000億ドルに達し、世界で最も価値の高いスタートアップの一つに数えられている。ChatGPTや動画生成AI「Sora」などの製品が世界的なブームを巻き起こしており、週間アクティブユーザー数は8億人を超える。

一方、BroadcomもAIブームの波に乗り、過去6カ月で株価が80%以上上昇し、時価総額は1兆5,000億ドルを突破した。同社が高性能カスタムチップやデータセンター接続技術に強みを持つことから、AIインフラ時代の最大の受益者の一つになる可能性もある。

今回の提携は単なる商業契約にとどまらず、AI産業が新たなインフラ構築段階に突入したことを示す重要な節目になるとみられている。

OpenAI and Broadcom announce strategic collaboration to deploy 10 gigawatts of OpenAI-designed AI accelerators

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