TSMCの米アリゾナ工場、4年で650億米ドル投資も稼働遅れ懸念

半導体受託生産大手の台湾積体電路製造(TSMC、台積電)が、最大650億米ドル(約9兆5875億円)を投じて米アリゾナ州で建設を進めている工場の稼働開始が大幅に遅れる見通しとなっている。

台湾Wind Mediaは12日、米ニューヨークタイムズや英フィナンシャルタイムズなどの記事を引用し、TSMCの米国工場が直面する課題を詳述した。

TSMCは2020年5月以降、米国アリゾナ州に3つの工場を建設する計画を相次いで発表している。計画によると、最初の米国アリゾナ工場4ナノメートル(nm)プロセス技術は2025年前半に生産を開始する。2番目の工場は次世代のナノチップトランジスタ構造のための世界最先端の2nmプロセス技術を使用し、28年に生産を開始する計画だ。

ニューヨーク・タイムズ紙によると、TSMCのアリゾナ工場は従業員との文化コミュニケーションやトレーニングなど人員管理で課題を抱え、稼働開始時期に影響を及ぼす可能性があるという。現在、アリゾナ工場にいる従業員2200人のうち約半数が台湾からの出向者だ。米国人労働者と台湾人管理職の間のコミュニケーションでトラブルが多発しており、今後は台湾人従業員の割合を減らす計画だという。

またアリゾナ工場が政治的脅威に直面する可能性も示唆している。米共和党の大統領候補のトランプ氏は先のインタビューで、「台湾は米国のチップ産業を奪った」と露骨に指摘し、米国政府が台湾企業に資金を提供して米国でチップを生産していることを批判している。トランプ氏が大統領に再選されれば、TSMCに対する補助金政策が大きく変更される懸念も出てきている。

バイデン米大統領は2022年8月、国内で半導体製造する企業に対して総額4000億米ドル以上を提供する「CHIPSおよび科学法(CHIPS法)」に署名した。TSMCも補助金などを獲得している。

一方、英フィナンシャルタイムズの調査によると、対象となる企業による投資案件の約40%は進捗が遅れたり、中断したりしているという。 TSMCもまだ正常に生産に入れていないだけでなく、アリゾナ州の第2工場の量産開始時期は2年遅れる見通しとなっている。サプライヤーの長春集団が現地で3億米ドルを投じる工場も2年遅れる計画で、KPCT Advanced Chemicalsが2億米ドルを投じる工場の建設計画も中断しているという。

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