中国車載電池大手が欧米進出加速、対米投資は1,000億元

中国の車載電池大手が海外進出を加速させている。国軒高科と億緯リ(金へんに里)能(EVEエナジー)が9月上旬に米国工場の建設計画を相次いで発表した。すでに米国工場の建設を発表している寧徳時代(CATL)と遠景動力を合わせた大手4社の対米投資額は、直近2年間で1,000億元(約2兆864億円)に迫る。

国軒高科は、20億米ドルを投じて米イリノイ州に電池工場を立ち上げる。EVEエナジーは、米国に合弁会社を設け、同新会社を通じて現地に電池工場を建設すると発表した。同合弁事業の投資総額は26億4,000万米ドル。

再生エネルギー大手の遠景科技集団傘下の遠景動力は昨年、米ケンタッキー州とサウスカロライナ州にそれぞれ電池工場を新設する計画を発表しており、投資額はそれぞれ20億米ドルと8億1,000万米ドル。

CATLは今年2月、米フォードと共同でミシガン州に工場を建設するとことを明らかにした。投資額35億米ドルの同計画を巡っては、一部メディアが「建設の一時停止」を報じたが、CATLは「計画を順調に進んでいる」と声明を発表した。

米国は電池メーカーにとり、巨大かつポテンシャルの大きいマーケットだ。米国では、車載向けを中心に電池のサプライチェーン(供給網)を現地化する動きが広がっており、電池メーカーと現地電気自動車(EV)メーカーとの関係は緊密化している。

一方、中国の電池メーカーはグローバル戦略の下で、欧州進出も競っている。東興証券によると、中国電池メーカーの欧州進出は2018年に始まり、22年に第1陣となるCATLと国軒高科の工場が稼働した。CATLは、ドイツ工場の新ラインが今年稼働予定のほか、ハンガリーに100ギガワット時の工場を新設する予定だ。国軒高科とEVEエナジーも海外工場の新設計画を発表しており、25年の稼働が予想される。

もっとも欧州市場を巡っては、欧州委員会が先月、中国製EVを対象に補助金調査の実施を発表したことが新たな変数だ。アナリストは、中国製EVの対欧州輸出の規模はそれほど大きくないとして、「補助金調査が中国EV業界にとっての打撃となるか、あるいは中国企業の現地生産化を後押しする商機となるか未知数」と指摘した。

9月29日付財聯社によると、リチウムイオン電池の生産を手掛ける欣旺達電子(サンオーダー)の王威董事長は、米国の「インフレ削減法案」、外国からの対カナダ投資について定める「カナダ投資法」、欧州の「重要原材料法」、電池および廃電池に関するEUの改正版「バッテリー規則」といった欧米の政策は、中国EV企業の海外市場に一定の試練となるとの見方を語っている。

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