AI開発停止の米署名活動、AIブームの中国に一石投じる

人類と知能を争うAIシステムは社会や人類に深刻なリスクをもたらす可能性があるとして、企業や研究機関に高度な人工知能(AI)の開発を一時停止するよう求める署名活動が米国で始まり、AI開発ブームに沸く中国にも一石を投じている。

このほど公開された書簡では、OpenAIが開発した対話型AI「ChatGPT」を支える大規模言語モデルの最新版「GPT-4」よりも強力なAIシステムを開発と運用を少なくとも6カ月間停止するよう求めており、米実業家イーロン・マスク氏や、AI専門家など1,000人以上が署名している。

OpenAIは3月15日に「GPT-4」を公開。その2日後には百度が中国版GPTと呼ばれる「文心一言(アーニーボット)」を発表し、試験運用を始めた。米中企業が相次いで独自の大規模言語モデルを打ち出す中で、世界はAIブームが再燃している。

中国国務院(中央政府)は2020年4月、「新世代人工知能発展計画」を発表した。ビッグデータ、クラウドコンピューティング、IoT(モノのインターネット)などの長所を活かし、AIと実体経済との深い融合を推進するとしている。 中国のAIの市場規模は年々拡大しており、22年は2,680億元(約5兆1,670億円)に達したとされる。

■大規模言語モデルで米国に及ばず

大規模言語モデルの開発ブームに沸く中国には、リスクとチャンスが共存している。

騰訊網によると、中国は同分野で一定の進展を得られたが、イノベーションを生み出し続ける良好な生態系がいまだ確立されていない。大規模言語モデルの分野で中国は、計算力、アルゴリズムともに米国に水をあけられている。産学研の各界が提携や情報交換を深め、企業や研究者が短期的な利益追求ではなく、長期的な投資・開発に専念できる環境づくりが必要だ。雇用の喪失、個人情報の漏えい・悪用など、AI活用に潜むリスクも無視できない問題となっている。

中国はサイエンスイノベーションを促す良好な生態系の構築を急ぎ、国産大規模言語モデルの開発・更新を推進すると同時に、AIのリスクを回避・制御するための法律やルール作りを急ぐべきだとする意見もある。

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